06

「親兄、俺だ。連れて来たぜ」
「親泰か。入れ」

親泰が障子を開けて入ると、侑果も続いて部屋に入る。
侑果は親泰に促されて正面に座り、親泰は少し後ろに座った。

「顔を上げろ」

元親の言葉に顔を上げた侑果は、おずおずと視線を合わせる。表情はこわばっており、不安げな様子が見て取れた。
元親は少し声色を和らげながら声をかける。

「具合はどうだ?」
「だ、大丈夫です…」
「そうか」
「……あの、」

微かに震える手をごまかすように握りしめながら侑果は、思いきって聞く。

「なんだ」
「ここはどこなんですか?」

不安に揺れていた双眸が、また違った光を放つ。元親には、何か独特な雰囲気を感じさせた。
侑果の言葉で室内は静まり返る―――が、それを切り裂くように元親の肩にいた鸚鵡がばさりと飛び上がり、そのまま侑果の肩へと飛び移った。

「っわ!」
「ユウカハ、オタカラ!モトチカノ、オタカラ!」
「え、なに?しかもなんで、私の名前を知ってるの…?」

先程と同じように、"ユウカ"と呼んだ鸚鵡に、侑果は驚いて元親を見る。
元親は鸚鵡をその様子を見つめていたが、侑果へ視線を戻す。
そして、ふ、と笑んだ。

「…分かった。
お前はそいつが"お宝"っつーんなら、そうしようじゃねぇか」

そう言いながら立ち上がった元親に、侑果はよく分からないといった困惑した表情で見上げる。
それを気に止める事もなく、元親は不敵に笑って見せた。

「俺は四国を治め、"西海の鬼"と呼ばれる、長曾我部元親だ」

特長的な槍の先には碇が付き、鎖は元親が歩く度にじゃらじゃらと音を立てる。
侑果の肩から鸚鵡が飛び立つ。

「俺も一端の海賊頭だ。
"お宝"を目の前にして、そうやすやすと見逃すわけにはいかねぇなァ?」

飛び上がった鸚鵡は元親の肩へと飛び移り、羽を休める。
元親は侑果の目の前に来ると、槍を横に付き、しゃがみ込んで顔を覗き込む。

「なあ"お宝"、アンタの名を教えちゃくれねぇか?」
「…え、侑果です」
「そうか。侑果、」
「はい…?」

口角を上げ、右の隻眼に童のような好奇の色を浮かべて顔を近付ける元親に、侑果は目を丸くして戸惑いながら、逃げるように少し身体を退けぞらせる。

「悪いな、今からアンタは俺のものだ」





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