02

大海原をかき分けて進む、大きな帆船が一隻。
この帆船には、大砲が十数基も積まれており、一見には賊と間違えそうな容貌だが、西洋式の帆船にしては、日本的な和の造りが随所にある。
そして、白い帆には七鳩酢草が描かれていた。
帆は僅かに吹く風に波打っていたが、動力には程遠く、進行は遅い。
その船で舵を取る男は、じりじりと焼き付くような太陽を恨めしそうに見上げた。

「もう少し、風が強けりゃいいんだがな…」

すると何処からか、一羽の鮮やかな鸚鵡が飛んで来る。

「モトチカ、オタカラ!オタカラダ!」

そう言って男の肩に羽を休めた鸚鵡に、男は擽るように撫でる。
男は、四国を束ねる"西海の鬼"と呼ばれる、長曾我部 元親。
そして、この大きな帆船は彼の、長曾我部軍の本船である。

「こんなところでか?」
「スゴイ、オタカラ、オチテクル!」
「宝が、落ちる…?」

「ア、アニキー!」

元親は鸚鵡を怪訝そうに見つめていると、見張り台で周囲を見回していた船員から声が降ってきた。

「おう、どうした?」
「な、何か落ちて来やすよ!」

見張り台にいる船員は、双眼鏡を覗きながら叫ぶ。
その言葉に元親は目を見開き、肩に乗る鸚鵡を横目に見張り台を見上げた。

「それ、何だか分かるか!?」

元親の言葉に、見張り台から身を乗り出すように双眼鏡を覗いている船員は、更に慌てて叫んだ。

「た…大変だ、アニキ!」

尋常じゃないその慌て様に、他の船員達も作業の手を止め、見張り台を見上げる。
元親も船員と同じ方を向いて、肉眼で微かに見えるそれに目を瞠った。

「ひ、人が!人が落ちて来やす!」





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