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「俺と来いよ、ユナ」
ニヤリと悪どく笑う目の前の彼は、黒猫のようだった。
『貴方の所に行って、私にメリットがあります?』
「さぁな」
だが、今ここで戦闘にでもなれば負けるのは私だろう。たとえ魔法が使えると言ったってマギと只の魔法使いじゃ差は歴然、結果なんて戦う前から見えている。
私にメリットはあるか、そう聞いたが私にメリットがあっても彼にメリットはあるのだろうか。自分より力の無い、しかも女の私を自分の元の置くだなんて。
『私は女です、ただの力の無い女。そんな私を自分の元へ置いていたって自分の価値を下げるだけだと思いますが』
そんな私の問いにハァ?と不思議そうな顔をする。そして馬鹿にするように笑った。
「価値?そんなもん知るかよ、俺が欲しいと思ったから来いって言ってんだよ」
だから来い。そう続けた彼の言葉には有無を言わせない威圧感があった。
…なんて我が儘な子なんだろう。でも、それぐらいがちょうどいいかもしれない。
すみません、シンドバット王。すみません、ヤムライハ様。私は、皆様からの信頼を裏切ります。
『…いいですよ。そのかわり、』
私の面倒、ちゃんと見てくださいね。そう言えば、彼は悪戯っ子のように笑った。