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バレンタインは

女のコを世界一の

貴方だけの

パティシエに変える日。

覚悟してよね?

とびっきり美味しいチョコで

貴方のハートを

掴みに行くから――




『ゲッ焦げた』


プスプスと音をたてて焦げていくチョコレート。

これで焦げたのは5回目である。

私――朝倉由凪は好きな人にチョコレートを渡すため、チョコレートと格闘している。

私の好きな人、それは

獄寺隼人

銀の綺麗な髪をしているちょっと不良っぽい人。

最初は苦手だった

でも、だんだん知っていくうちに、彼の優しさを見つけた。

そこから好きに変わるのは、直ぐで

気付いたら彼から目が離れなくなった。

付き合えるなんておこがましい事は思ってないが、気持だけでも伝えたかった。

そして今日はちょうどバレンタイン。

絶好のチャンスじゃないか!
という訳で、チョコレートと共に私の気持を渡してしまおうと思ったわけだ。

でも、


『なんで焦げるんだよ〜』


チョコレートは溶ける事を知らず、焦げてばかり。

早くしないと、学校が…


「……なにしてんの?」

『!…って晴也か…』


誰かと思いきや弟の晴也だった。


『ビックリするじゃない、どうしたの?』

「甘い匂いがしたから」


それチョコレート?、と聞く晴也は驚く程の甘党。

ココアに練乳、砂糖、マシュマロを入れて飲むぐらいの甘党である。


『晴也のじゃないからね』

「知ってる」


にしても、と続ける晴也


「バカじゃない」

『はぁ?』

「なんでチョコレートを溶かすのに直火でしてるんだよ」

『直火?』

「チョコレートは普通湯煎だよ」

『ゆ、湯煎?』


ハァ、とため息をつく晴也

なんて失礼なやつだ


「料理は上手いのにチョコレート一つも溶かせないんだね」

『だってわかんないんだもん』


家でご飯を作るのは大体私。

意外と好評だったりする。


「…ちょっと貸して」

『あ、ちょっと!』


私の手からチョコレートを混ぜるヘラを取っていく晴也。

晴也はそのままお湯を沸かしてボールに入れた。

あまりにも早い動作にポカンとするしかない私。

チョコを細かく切って、違うボールに入れて、お湯の入ったボールの上に浮かべる。


「いい?これが一般的なチョコレートの溶かし方」

『おぉ…』


感嘆の声を漏らす。

ボールの中のチョコを混ぜていると、チョコが溶け出してきた。


『み、見て晴也!溶けた!』

「よかったね」


まさしく晴也様々、というわけだ。

よし、これを型に流してっと



〜五分後〜



型から外して、


『で、出来た〜!』


やっと完成だ!


『やったよ晴也!ありがとう晴也!』

「別にいいけどさ、早くしないと学校が」


現在時刻、8時15分。

………………


『ち、遅刻だーー!』

「じゃ、いってきます」

『もう準備万端ですか!?』


いつしたんだよ、いつ!

急いでチョコレートをラッピングして、学校へ走る。

心臓が、走る時とは違うドクリドクリという音をたてていた。

嗚呼、受け取って貰えるだろうか。




『おはよ〜』

「あ、おはよう由凪ちゃん」


彼は私の友人であり私のよき相談者でもある沢田綱吉くん−−通称ツナだ。


『ツナあのね、私今日こそ言う!だからさ、ツナも京子にチョコもらえるようにがんばりなよ!』

「わ、わかってるよ…ってえぇ!由凪ちゃん告白するの!?」

『バカ声がでかい!』


ツナってば、デリカシーがないんだから…

そんなところに現れたのが


「10代目ー!おはようございます!」


と、元気に手を振りながら走ってくる獄寺くんだ。


『…噂をすれば、ってやつだねぇ』

「確かに…」


ツナの前までダッシュでくるとまたまた同じように


「10代目、おはようございます!」


と、元気に言った。

………………………


『って私には!?』

「由凪!いつからいやがっったんだ!?」

『最初っからいましたけど!?』

「…わりぃ、見えなかった」『ひどっ』


でも、めげない!




時は過ぎて現在昼休み〜
(って早すぎでしょ!)

心臓がドクリドクリと音をたてる。

大丈夫私はできる、と言い聞かして獄寺のクラスへ行く。

そっと見てみると机には山のようにチョコレートが

で、でもめげないよ!

それに…気持ちを伝えるだけなら、いいよね

すーはすーはー、と深呼吸をして教室に足を踏み入れる。


『ご、獄寺隼人!』

「んだよ」

『ちょっときて!』

「はぁ?っておい!」


ぐいぐいと屋上までひっぱっていく。

屋上までの階段が、何故かとても長く感じた。




2月のわりには日差しがあり、すこし暖かくかんじた。

心臓は、まだドクドクと言っている。


「こんなとこまでつれてきて、どうしたんだよ由凪」

『えぇ、と』


ゆ、勇気を出すんだ私!

大丈夫、きっと言える、だから頑張れ私!


「用がないなら帰んぞ」


今にも出ていきそうな獄寺。

まって!

言うから、待ってよ!
私は貴方が


『好きなの!』

「……へ」


一言言ってしまえば後の言葉はスルリ、といとも簡単に出てきた。


『ずっと前から好きだったの!今まで言えなかったけど、本当に好きなの!付き合って、なんておこがましいことは言わない。けど、気持ちだけは伝えたかった…』


獄寺の表情は見えなかったけど、答えは分かっている。

きっと答えは――


「由凪」

『っはい』


何故か敬語になってしまう。

表情は、まだ見えない。

「さっきの言葉、

なかったことにしてくれないか?」
それだけで、分かった。

そう、だよね

あたりまえじゃないか、

こんなこと、最初からわかっていたことだろう?

だから、だから、

涙なんて

でるはずはないんだ。

視界がぼやける

ほほに一筋の液体が流れていく。

あれ、今日は晴れじゃなかったっけ?

じゃあこれは、何?


「―――!」


何か聞こえる


「―――!」


わかんないよ

「―――っ!」


もう一度、言って?


「っ由凪!」


気づいた時には

私の大好きな

彼の腕の中だった。


『…え?』

「違うんだ由凪!なかったことにしてほしかったのは、俺からその言葉を言いたかったからでっ!由凪の事を嫌いなんじゃなくて!その、」

『…本当?』

「こんな時に嘘なんかつくか」

『獄寺、私の事…好き?』

「っ好きだよ!」


ってことは、

両思い?

やった、やった!

すると突然、涙があふれてきた。


「ど、どうした?何か言ったか俺!?」


おろおろとしている獄寺が可愛くて、少し笑ってしまった。


『これはね、うれしすぎてないてるんだよ』


本当に、うれしすぎて

これからは


『よろしくね、隼人』

「!あたりまえだろ」



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