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雲一つない空。

窓から差し込む木漏れ日。

小鳥達のさえずり。

そして、


『にゃ、にゃんじゃこりゃーーーーー!』


猫の、叫び。

Hello!

私は朝倉由凪!

今日は久々のデートの日!

ちなみに私は人間です!

ここ、重要ですよ?

私は人間!

…な、はずだった。

鏡の中の自分の姿を見る。

鏡の中の自分は何処からどう見ても、明らかに、


『猫、だよなぁ』


真っ白な猫が鏡に映る。

猫なのにちゃんと喋れてるし…

とりあえず、何故こうなったのか
昨日、私は何をした?

えーっと、

デートが楽しみ過ぎて、寝れなくて、飴食べて、寝た。

…………………

あの飴かァァ!

そういやあんな飴いままで家になかった!

何故気付かなかった昨日の自分!

どうしようどうしようどうしようどうしよう!

そんなとき、



ピンポーン



嬉しいはずの、チャイムの音がした。

…まずい

彼氏――倉間典人が来た。

時計を見れば待ち合わせの時間。
待ち合わせは、私の家。

そして、典人は合鍵を持っている。

イコール、早く出ないと典人が不思議に思い鍵を開ける、
リビングに居ない、私の部屋に来る、


…ギャー!


た、大変だ大変だ大変だー!

え?これ何て説明したらいいの?

朝起きたら猫になってました!あはっ!
とでも言えばいいの!?

誰か助けて!てか来ないで典人ォ!

でも、いくら祈ったって、典人に届く訳もなく、

ガチャリ、とドアの開く音がした。

…え?

ちょ、ちょっと待ってよ典人くん。

いくら合鍵があっても、本人の了解を経てからにしようよ?ね?ね?

でも、足音は近づいてくる。

ついに、私の部屋の前まで来た。


「由凪?」


いませんいませんいませんよ!

後でもう一回出直してきて下さい。


「由凪?どうしたんだ?」


何もないよ何もないよ〜


「…入るぞ?」


ダメですゥゥ!

ガチャリ、


ドアが開いた。
目が、合った。


「…は?」

『…あはっ』


唯一の救いは、ちゃんと喋れることだねぇ…(遠い目




『…と、言うわけ何ですよ』

「いや、分からねえよ」

『デスヨネ』


私は説明が下手ですからね

あーあ、白雪姫なら王子様のキスで目覚めたりするのに…

………………

何考えてんの私!

うわうわうわうわ、はっずかし

こんな王道ないないない!

頭の中でグルグル考えていると、

スッと典人が私を持ち上げた。


『…へ?』

「大丈夫だって」

『いや何が!?』


近づく典人の顔。

…まって!
ないよね!そんな王道!違う違うないないない…

なんて願いは簡単に砕かれた。


チュッ


私の体から煙が出てくる。

…何コレ

え?もしかして、もしかする?

おそるおそる自分の手を見てみると、
猫の手、ではなく人の手。

バッと鏡を見ると、映っているのは見慣れた自分。


『…嘘だぁ』


王道スゲェ…

典人も、驚いていた。

…自分がしたんでしょーがー!


『…典人君よ、もし、戻らなかったら、どうしたんだい?』

「…大丈夫」

『何が!?』


あーもう、恥ずかしい。

さっきの光景がフラッシュバックする。

典人の顔が近づいてきて、

近づいてきて、


『っ//』


顔、赤くなるな!


「由凪、顔あか『うるさーい!』うおっ!」


顔を隠して、大きな声を出す。


『…典人のバカ』

「はいはい」


ポンポンと頭を撫でる典人。

…落ち着く。


『…典人、』

「どうした?」

『…ありがとう』

「どういたしまして」


ま、普段見れない由凪も見れたし、と続ける典人。


『うるさいっ』


デートは出来なかったけど、これはこれでいい…かな?



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