俺と璃依那はガキの頃から仲が良かった。
同い年で家が真向かいっていうこともあったけど。
それ以前に、とっても気の合うヤツだった。
ガキの頃はなんとも思わなかったけど、月日が経つにつれて気付いたんだ。
いつの間にか幼なじみという枠を越えた感情が存在していたことに。
俺がアイツに恋愛感情なんてものを抱いていたんだ。
そして中2の春、ついに俺はアイツに告白をした。




「俺と、付き合ってほしいんだけどっ…!!」

「えっ…あ、うん…。お願いします…。」



初恋は実らないなんて誰が決めたんだろうか。
あのときの俺は浮かれに浮かれ、舞い上がっていた。
まさか璃依那が俺のことを好きだなんて思ってもみなかったから。
そんな感じは全然なかったし、璃依那はモテる方だから他に好きなヤツがいると思っていた。
だから一方通行な想いでも、伝えないよりはマシだと覚悟を決めてぶつかってみた。
予想外の返事に俺は更に落ち着きなくなっていたのかもしれない。


付き合うだなんてどうすんだよ。って気付いたのはそれから。
別に今までと変わらない接し方で良かったはずなのに。
付き合ってみると妙に緊張してこれまでどうりなんて無理だった。
でも璃依那はそんな俺の気持ちを察してくれていたのか、気を遣ってくれていたみたいだ。
想像以上に無理をさせていた。俺がアイツに…。



「なんで分からないのよ!!」


「お前が分かれよ!!」


「っ…もう平助なんて知らない!!」



つまらないことで喧嘩することが多くなってた。
そしていつの間にか話す事すらなくなって自然消滅。
あっという間に中学を卒業し、高校に進学した。
神様のいたずらなのか、同じ高校の同じクラス。
マジ勘弁してほしいと思った。なんてたって気まずさ全開だったから。
同じクラスだからと言って会話する事もほとんどなく、高1も中盤まできた頃。
璃依那に彼氏が出来たと噂が広まった。
しかもその相手が2年の斎藤一。俺の部活の先輩だ。
同じ2年の沖田総司と並んで、女子からの人気が高い。
そんなヤツに彼女が出来たとなったら噂にもなるだろうけど…。
まさか一くんとだなんて…差をつけられた気分だった。


一度、璃依那と一くんが一緒に帰ってるところを見たことがある。
実際に目撃するまで、付き合ってるなんて嘘だろうって…思っていた。
でも生憎俺は帰る方向が璃依那と一緒で、まるで二人のあとをつけているかのようにゆっくり帰った。
遠回りしたつもりだったんだけど、俺が家に着く頃にあいつら家の真ん前でいちゃついてた。
微笑んでる璃依那の顔を見た時、急に胸の奥がズキンと痛んだ。
しばらくぶりに見た自然な笑顔。俺は付き合ってる間にあんな顔をさせてやれていなかった気がする。
いつも無理な笑顔ばかりを見ていた…そんな気がしたんだ。



「平助。」



思わず俺を呼ぶ声が聞こえて、一人肩をビクつかせた。
電柱の影から顔を出せば、一くんがこっちを向いて立っている。
隠れてたつもりなんだけど…どうやらバレてたみてぇ…。



「何故、そんなところに隠れている。」

「いや、その…。なんか雰囲気良さげなお二人さんが見えたから、邪魔しちゃ悪いかなって!」

「そういえば、平助は中学時代に璃依那と付き合っていたと聞いた。」

「えっ!聞いたって…誰に…。」

「璃依那本人からだ。」



璃依那が…?自分から一くんに言ったのか…?!
なんで…そんなの、言う必要なんてないだろ。



「お前は随分と璃依那を笑顔にしてやれてたんだな。」

「え?」

「お前の事を話す璃依那は、いつも楽しそうだ。」



ふと昔の事が蘇った。ガキだった頃の一番キラキラしていたときを。
いつも笑っていたアイツを、守ってやりてぇと本気で思った。
でも、アイツから奪ったのは俺だと感じていたのに…。
もしかしたらまだ、俺はアイツの心のどこかに存在しているのかもしれない。
多くは望まない。ほんの少しでいい…アイツにとっていい思い出として残ってくれているなら…。
俺はそれで…。
そして一くんは不安なんだ。きっとあの頃の俺みたいに。
無理させてるんじゃないか。気を遣わせてるんじゃないかって。



「何言ってんの…。今、璃依那の彼氏は一くんなんだぜ。一くんが不安になってたら、アイツだって不安だよ。」

「…。」

「だから、一くんはさ…もっと自信持って。アイツをたくさん笑顔にさせてやってよ。」



何だか俺が泣きそうになった。今でも俺は璃依那を好きなんだって知ってしまったから。
手を伸ばしても届かないところに行ってしまったけど、アイツは俺の心の中で誰よりも大切な存在に変わりはない。
それだけは生涯変わることのない、小さな約束。





過ぎ去った時間はもう戻らない

あのとき止まった時間はいつ動きだせるんだろうか




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