4 2nd 京都校に通う庵歌姫と、一級呪術師の冥々が任務に向かったきり連絡がつかないと、同級生の家入硝子が心配し、そうして役に立てと物言いは最悪ながらもクラスメイト達は大人しく召集された。向かった先では呪霊の領域が展開されており、荒っぽいやり方だが手っ取り早いため、相手が作り出していた領域を悟が無限で破壊した。果たして無事だった歌姫と冥々は双方ともに反応は違えど、五体満足で元気だった。悟への怒りで肩を震わせる歌姫の背後を狙う呪霊を傑は自身が出した呪霊に飲み込ませる。 「悟、弱いものイジメはよくないよ」 同級生を宥めるつもりで口にしたが、失言だったようで歌姫の怒りを買うことになった。それに愛想笑いを浮かべると、より白い目を向けられ、悟には笑われた。解せない。唯一の味方だと言うように、歌姫が硝子に飛びつく。 「硝子!アンタはあいつらみたいになっちゃだめよ!!」 「あはは、なりませんよ。あんなクズ共」 酷い言われようだ。肩を竦めてみせるとより胡散臭そうな目を向けられた。そんな傑の横で、特に何をしたわけでもなく呼ばれたのでついてきただけの槭が抗議に口を尖らせる。 「俺は別にクズじゃねーし」 「……まぁ確かに槭はクズではないな」 「そうね、すっごいバカだけど」 見た目はDQNで中身は馬鹿だが、誰かを罵ることも誰かを悪く言うことも槭はしない。教師が見ていなければいいといって酒やタバコをするでもなく、夜は九時に就寝する、見た目とは裏腹に全く破天荒ではない性格。馬鹿ではあるが堅実寄りで、決してクズとは言い難い。それには歌姫も硝子も同意のようで頷いていた。 「何か変に悟ってる時と、急にバカになる時があるわよね、あんた」 「ひでぇ!!!これがさげておとすってこと!!??」 「どっちも落ちてんのよ」 「どんだけ落ちるんだよ」 歌姫と悟のツッコミがユニゾンする。当の槭は、何が間違っていたのか分かっていないようでクエスチョンマークを飛ばしていたが、解決する気もないようでそのまま流した。ただ、ぽつりと小声で呟く。 「そりゃまぁ一回目に俺が理解するまで根気よく教えてくれるやつがいたからなー…」 「ん?一回目?」 「いんや、独り言。忘れちゃったり、知らねーことはしゃーねーだろー。俺記憶力もなきゃ頭良くもないんだし」 確かに昨日の授業の記憶もないし、何度数学を教えても理解できてない。独り言だという部分はよく分からなかったが、根気よく教えられれば覚えていられる部分もある、ということらしい。これはつまり傑に、もっと根気よく教えろという遠回しな要求だろうか。いやそんな駆け引きが出来るほど槭は頭が良くない。深く考えすぎだろう。傑はそう背が高いわけではない槭のブリーチで痛み切った髪を見下ろして、そう結論づけた。そこに冥々からの爆弾が落とされる。 「それはそうと君たち、帳は?」 「あ」 「あ!!!忘れてた!!!!!」 空は綺麗な快晴。ひときわ大きい槭の声がよく響いた。 |