夏油傑の同級生は揃いもそろって変わり者だらけである。
常識の無い破天荒問題児だが稀有な瞳を持つ五条悟、高難易度の反転術式を感覚的にやってのけるヘビースモーカー家入硝子。そして。

「また槭は怪我をして戻ったのか…。お前のレベルにあわせて任務は任せているはずだ。それなのに何故毎回怪我をする」
「………………」

仁王立ちしている担任の夜蛾、その前でじっと地面を見ている男。黒いマスクをしており見えない口元は一言も発さない。
パッと見は普通。何一つ突出していないその男は、黒いマスクをして分厚い前髪で目元を覆い表情を隠していた。そして入学して以来一言も発したことがない。聞いた話では特に障害や術式の影響でもなく、入学前までは普通に話していたと。夜蛾も入学する前に面談した際にはきちんと喋っていたといっていた。しかし入学してから一言も話さなくなったらしい。一体どんな心境の変化があったというのか。傑との初対面の挨拶から彼は無言だったために彼については何も分からない。喋らないので他の呪術師との連携も難があると聞いている、傑と組んだ際も、彼は怪我をしてーーーいや彼は誰と組んでも、単身で任務に行っても、怪我をする。絶対に怪我をする。もはや呪われているのではないかと勘ぐる程だ。

「傑ー?」
「悟」

夜蛾に怒られている槭を遠巻きに見ていると、悟がやってきた。悟は傑の目線の先を追って、うえっと舌を出した。悟は彼が好きではないらしい。無口でありコミュニケーションも取ってこないので何を考えているのか分からず苦手だという。

「あーまたあいつ?」
「そう、怪我が多いから怒られているみたいだね」

授業の時だけすっと現れて、終わればすっと消えるので交流はろくに取ったことがないが、一応は数少ないクラスメイトだ。気にしない方が難しい。傑が表向き優等生ということもあり、夜蛾にもどうにかならないか、同級生ならば心を開くのではないかと言われたことが何度もあった。その度に面倒だと思いながらも声はかけるが無視される。

「傑は何であいつ怪我してると思う?」
「私?いやわからないが……そうだな、与えられているのは実力に見合った任務だろうから、彼はいつもどこかで転んだりしているし、注意力が足らないんじゃないかな」
「へー……」
「へーって…。じゃあ悟はどうなんだい?」

悟にとっても彼はクラスメイトだろう。傑が悟を横目で見ると、悟は肩を竦めた。

「さー、俺にはあいつ全然分かんねーよ」
「私に聞いておいてそう言う」
「傑の言ってる意味とは違うって!あいつ…なんか呪力が変なんだよな……」
「変?」

悟の眼は全てを暴く。元々ズバズバ言う性格も相まって遠慮のない男だが、その持ち主が呪力の事で言葉を濁すのは珍しい。訝しむ傑に、しかし悟はそれ以上は分からないと首を振った。

「んー……言語化できねーわ。俺がもっと六眼使いこなせれば何か分かるかも」
「今以上に君が眼を使いこなせるようになったら怖いね」
「そん時は傑の事も丸裸にしてやるよ」
「おー、怖い」
「そのいい方絶対ェ思ってねーだろ!!!」

悟の言葉を笑い飛ばして、傑はその場から興味を失ったと足を動かした。悟も隣をついてくる。この後出掛けるか部屋でゲームでもするかと盛り上がる傑と悟。

その二人の背を、槭がじっと見ているとも知らず。



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