現代









粗方木枠の荷箱を確認し終え、伏黒は腰を上げる。

「此処もハズレか……」
「まったく…広すぎるわココ。何でオークション会場がいくつもあるのよ…隠れてやる気があるのかしら」

釘崎が木箱で擦れたのかスカートの汚れを払いながら文句を口にした。オークションは伏黒達が想定しているよりも大規模なもので、いくつもの倉庫を利用して開催されるようだった。人手が必要だと荊がいった意味がよくわかる、到底少人数では回りきれないだろう。警備の数が思ったほどいないので無用なトラブルを引き起こさずに済んでいるのは幸いだ。
虎杖が頭の後ろで腕を組んで首を傾げる。

「先生の目でも視えないの?」
「呪力が目視できないように細工されてるみたいでね。それでこんな大人数ですることになってるってわけ」
「肝心な時に使えないわねぇ」
「ひっどーい!先生傷付いちゃう!」
「狗巻先輩の方はどうだろう」
「真希さんからはまだ連絡来てないわ」
「え、シカト!?」

釘崎がスマホを確認し、もう片方でも進展がない事を知る。呪力を感知できない状況のせいで荷物を一つずつ見て回る必要があり時間がかかる。警察の検挙が始まる前に見つけられるだろうか。
次へと移動しようかとしたところで、虎杖が何かを床から拾い上げたのに気付く。

「虎杖、どうした」
「あ、いや、落ちてたんだけど、これなんだろなーって」
「見せてみろ」
「出品リスト?……いえ違うっぽいわね、下の方のこれ何かしら」

反対側から釘崎も覗き込んで、そして眉間に皺を寄せた。薄汚れたその紙は一見普通の出品リストのように見えた。しかしよくよく見れば、ただの紙ではない。呪力が込められて何かが念写されている。その上から誤魔化すように出品リストが書かれているので、一般人からしたらただのリストだろう。しかし伏黒達は呪術師だ。呪力で描かれた痕跡を見つめる。

「なんか所々模様みたいになってんだよなー」
「これって……」
「なになにー、僕にも見せてー」

頭上から五条が紙を覗き込む。自分が見るよりはるかに五条に見せた方がいいだろうと、身を引いた。それを見るなり、五条の顔色が変わる。

「やられた……!クソ、あいつら荊さんを元々生かしておくつもりが無かったのか」

その言葉に瞬時に事態を理解した。罠だ。一体誰が、何の目的でなのか分からないが、『荊は以前もしくっている』と五条は言っていた。つまり、ーーー今回の呪物回収とともに荊は足切りされる。
伏黒は手印を組み、影から白い玉犬を呼びだした。

「玉犬に荊さんを追わせます!」
「急げ!」
「どうなってるのよ一体!!」
「七海!してやられた!荊さんが狙われてる!!!」

走り出す四人。五条がスマホでもう片方のチームにも連絡を取る。
その時、伏黒は荊に預けた黒い玉犬の消失を感じ取った。





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