毎日根明と一緒にいると眩しさでいつか消し炭になりそうだが、残念なことに中々消し炭になれていない。梛は未だに固体だ。根明とセットにされることが多くなり、周囲から一緒にいることが当たり前に思われるようになってしまった。そろそろ気が付いて欲しい、梛が殆ど喋っていないことに。しかし何故か誰にも気が付いてもらえなかった。根明力すごい。どうせならクラスの根暗隠キャグループに入りたかった。気が付いたら入部することになっていたオカ研はというと、絵に描いたように子供の遊びのような部活だった。あれだけ幼稚なことで喜べるのであれば杞憂することもないと、暫くは静観のスタイルを保っている。
梛を振り回す虎杖悠仁という根明が決して悪い奴な訳ではない。いやパチンコしているのはどうなんだろうかと思うが、基本的にはいい奴だと思う。どうやったらこう育つのだろうか。梛は自分自身と虎杖悠仁を比べて、さらに惨めな気持ちになった。

「重い………」

いつの間にか交換することになっていたメールアドレス。どうして交換してしまったのか記憶にない。うまい断り方を覚えたい。しかし梛は立派な根暗なため、対面だけでなくメールひとつとっても返事が苦手だ。相手に馴れ馴れしすぎないか、失礼ではないか、ぐるぐると考えすぎて気持ち悪くなる。そのため返事をしない。なのに根明はメールをしてくる。なぜなの。
そして今日もメールが来た。メールを開くことすら憂鬱だ。どうせいつものどうでもいいことだろうと思いメールを開いたら、例の唯一の身内のお爺さんが亡くなったらしい報せだった。

「……そんなこと言われても」

正直知らん。名前どころか、顔も知らない爺さんだ。冷たいと言われても、梛にとっては知らない爺さんが死んだだけだ。何より、梛にとって死は身近な事だ。寿命で死ねたのであれば、それはとても幸せなことで、良かったねとすら思う。いや身内を喪った人に良かったねなんて口が裂けても言わないが。
なんと返せばいいのか分からず、だがいつものように流せるような内容でもなかったので、ネットでうまい言い回しをぐぐってそのまま使いまわした。どう考えても、報せる相手を間違えている。何故梛に。そろそろ虎杖悠仁には気が付いて欲しい。
梛と虎杖悠仁は釣り合っていないということに。

此処数日、梛は学校を休んでおり、生家から与えられた仕事を漸く終えた帰りだった。偶にこういう時がある。いくら生家から離れたからといってこの呪われた血がなくなるわけではない。どこまでいってもこき使われる。それでも生家にいるよりは精神的に幾分かはマシだが。微妙に死なない程度の仕事を与えないで欲しい。生かしたまま飼われている心地だ。仕事を終えて、虎杖悠仁へのメールの返事をして、世話になっている家に戻ろうとしたところで、微かに違和感のある呪力を感じた。放っておけば良いのだが、何故か胸がざわつく。
心に従って足を向ければ、学校に辿り着いた。空を見れば、帳が降ろされている。梛は眉を顰めた。おかしい、学校に呪霊が現れた連絡は来ていないし、呪術師の派遣の話も聞いていない。学校には圧倒的に強い呪物があった。それが周囲を威圧しており他の呪霊が誘き寄せられるなんてことはないはずだったのに。今は複数の呪霊の気配がする。

迷った。トラブルに自分から飛び込むなんてどうかしている。でも死ぬチャンスかもしれないとも思った。田舎の呪霊は弱く、この程度では梛は死ねない。今学校から感じる呪霊は二級程度が複数。もしかしたら呪物がさらに呼び寄せるかもしれない。此処で無視して帰宅して人的被害が出た場合、後から生家に責められるのも目に見えている。一体何をしていたんだ役立たず、と耳元で囁かれた気がして、吐き気がして。
梛は学校へと走り出した。





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