おまけ





体を揺さぶられ、無理やり覚醒を促される。

「恵、起きて。遅刻する」

疲労から泥のように眠っていた恵は瞼を持ち上げることも、口を開くこともしたくなくて、布団の中で丸くなった。

「めぐみー」
「……、……」
「おわっ」

揺さぶり続ける相手の腕を掴んで布団の中に引きずり込む。甘えるように腕の中に抱き込めば、石鹸のいい匂いがして。しかし雰囲気とは裏腹にバシバシと背中を容赦無く叩かれた。痛くはないが絶対に寝かさないという意思感じる。

「恵!」
「……眠ぃ」
「夜遅くまで五条さんと一緒だったのは分かってるけど、だからって学校休んだらダメだって。五条さんと約束したんだろ?」
「んー……」
「今日行けば明日休みだがら、ほら、後一日頑張るだけだから」
「……んー……」
「朝ご飯冷めちゃうんですけどー。起きろー」

うっすらと目を開けると、視界いっぱいに榧が広がる。パチパチと瞬きをする榧に頬を擦り寄せた。すべすべと滑らかで、噛み付きたくなる。すると怒られるのでしないが。
恵は諦めたように溜息を吐いて、榧の拘束を解いた。するりと榧が布団から抜け出してしまう。

「はぁ」
「やっと起きた?眠り姫」
「……じゃあ目覚めのキスしてくれ」
「調子に乗らない」

両腕を引っ張って上体を起こされる。明け方まで五条の付き添いの元任務に出ていたので、かなり眠たい。呪術師の任務をすることで報酬を得て、それを榧たちの生活費として渡しており、その疲労感に文句はない。ただ、眠気だけはどうしようもできなかった。任務は不定期で、休日であればいいが、平日にあることもある。任務で学校を休んで出席日数を下げることはあってはいけないと、事前に五条に言われており、榧は妹と弟とバラバラにならずにすんだ恩人として認識している五条に従って、恵をいちいち起こす。あんな人の言うことは話半分に聞いておけばいいのに。
だが毎朝、榧に起こされるのは悪い気はしなかった。

「好きだ、榧」

寝ぼけ眼のまま幸せを口にすれば榧はキョトンとしたのちにクスクスと笑って。

「はいはい。ありがと」

恵に寝起きの口づけを落としてくれる。





「おはよ、恵」
「嗚呼、おはよう、榧」




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