14









靴も雑に脱いで、榧を部屋まで連れていく。そして布団に放り投げた。

「痛っ!…恵、何を!?」

簡単に吹き飛ばされた榧は布団に倒れこみ、慌てて体を起こそうとしたが、恵はそこへのし掛かった。恵を押し返そうとする腕を目についたネクタイで縛り上げる。榧の瞳が揺れる、カタカタと震え出す榧の体に、冷静な頭の一部が止めろと叫んでいるが、体は止まらなかった。

「やだ、めぐ…」
「声出すな、津美紀達に聞かれたいのか」
「ぁ!」

きっと、恵がしていることは榧の父親と同じことだ。それでも、榧を許してやることはできなかった。榧が榧自身を大切にできないことに、恵が大切なものを守れないことに憤っているわけではない。
不安と恐怖にまみれた榧の瞳を、暗闇の中、恵は真っ直ぐに見下ろした。

「……、ッ……!」
「榧、俺の気持ちを、勝手に決めつけるな」

榧を好きな気持ちだけは、榧本人であっても傷つけていいものではない。拘束する行為と対照的に、榧の唇にそっと恵は口付けを落とした。唇を優しく食む。榧の唇は荒れていて父親との行為の時に噛み締めて耐えていたのは一目瞭然だった。それを労わるように何度も何度も口付け、舌先で癒すように舐める。戸惑いながらもうっすらと開く榧の唇に、恵は誘われるままに舌を差し込んだ。溶かす様に、甘やかす様に、咥内を味わう。手を榧の服の裾から差し入れると榧は体を揺らしたが、宥めるように何度も掌で撫でてやると、段々と汗ばんで力が抜けていった。

エゴだと分かっているけれど、この胸を締め付ける愛しさを、少しでも榧にわかって欲しかった。






人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -