12 あれきり部屋に閉じこもってしまった榧に、深夜様子を見に部屋を訪れた。体は綺麗にしたが、傷や殴られた跡もあったので悪化し発熱して動けなくなっている可能性があった。 「榧……?」 暗い室内に声をかける。返事がない。引かれた布団に厚みがないのが夜目でもわかり慌てて電気を点ける。部屋の中は、もぬけの殻で誰もいなかった。いつから居なかったのか分からない。玄関を見れば榧の靴が無くなっていた。外に行ったらしい。恵はリビングに寝かせていた弟を抱え上げて妹の部屋へと移動させた。妹を起こさないように気を付けながら、津美紀の肩を揺さぶって起こし声をかける。 「榧が居ない」 「!」 「探しに行く。弟と妹、頼めるか」 「分かった、気を付けてね」 弟を渡し、恵は直ぐに家を飛び出した。月どころか、星ひとつない、真っ暗な夜だった。 手印を組む。 「玉犬」 恵の呼びかけに応じて影から犬が二匹現れる。そのフサフサな毛で覆われた頭を撫でた。 「榧を探せ」 |