外の自販機で飲み物を買い教室へ戻ってきた伏黒の袖口からするりと何かが滑り落ちた。気が付いた虎杖が指をさす。

「ん、なぁ伏黒、なんか落ちた」
「ッ」

その言葉に伏黒が慌てて振り返り、床に落ちたものを手に取った。
強張った表情がホッと和らいで、大切なものだと一目でわかる。

「悪い虎杖、助かった…、無くしたくないものなんだ」
「マジか!良かったな!」
「……手首に巻いてたんだが、紐が緩んだのか…」

手の中で検分をしている伏黒の横から虎杖が覗き込む。
釘崎も反対側から覗き込んでいた。
複雑な編み込みがされた紐だった。黒い紐を主として細い赤色の紐がアクセントに編み込まれている。
普段装飾品を好まない伏黒には珍しい所有品で、釘崎が訝しむ。

「綺麗だけど…何それ?」
「御守り。多分組紐なんだと思う。俺を育ててくれた人がくれた」

伏黒が言っていた通り、千切れてはおらず輪の形を保っており、緩んで手首からすり抜けたようだった。
いたく大切そうな声音に虎杖は首を傾げる。

「ん?伏黒って五条先生が面倒見てたんじゃなかったっけか?」
「そうだけど…そうじゃない。俺は小一から中学に入るまである人に育てられてたんだ」

進んで自らの話をしたがらない伏黒がポツポツと語り出す。





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