11 米屋の前にゆらりと影が現れた。 それを警戒するように弧月を構えれば、そこから空閑が姿を現した。 向こうは頭の後ろで手を組んで、もう終わったような雰囲気を出している。 空閑に敵意がないのを知り、米屋は国近からの通信に耳を傾けた。 煙幕の外は想像通りらしい。 「くっそ、緑川は安易に飛んでベイルアウトするし、佐鳥のやつまた外すし…」 「今日のくぐい先輩はワープがないからグラウホッパーをいれているんだ」 「マジかよ!あの人なんでも使うな!?…こっちの読みが甘かったか…」 グラスホッパーを使用して、別の建物へと移動したらしい。 今日は随分とアクティブな動きをするところを見ると、本気で国近を潰そうとしているのだろう。 大人げねぇと米屋は冷や汗をかく。 周囲の白い煙は消える気配がない。 誰が傍にいるか分からない状況で動けず、米屋は空閑の顔をうかがう。 「下手に出ると、京介が外にいるってわけか」 「そういうことですな」 「マジかよー」 天を仰ぐ。 空閑にその気がなくとも、ここから出れば、狙い打たれるようだ。 米屋の前から姿を消したのはこのためか。 完全に烏丸の存在を考えから消していたのが仇となった。 てっきり佐鳥を狙いにでも行ったのかと思ったが。ふと気が付く。 「おい、辻はどうした」 「はてさて?」 「…何から何まで、読み通りってことか」 先まで辻がいたはずなのに、いなくなっている。 つまり、そういうわけか。 米屋はあーくそと頭をかいた。 程なくして、国近からまた通信がはいる。 それは空閑も同じだったようだ。 「佐鳥先輩はベイルアウトしたらしい」 「全く、本当に怖ぇー人だよ。あの人」 どこまで計算してるんだ。 せめて何人か落とせるかと思ったが、一人も落とせないとは。 やっぱり作戦って大切なんだなとしみじみと感じた米屋。 この状況から、せめて誰か、空閑を落とせるかなと自信はないながらに考えてみたが、結局無意味だった。 もはや国近のアシストもないまま、米屋はくぐいに狙撃された。 |