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米屋の前にゆらりと影が現れた。
それを警戒するように弧月を構えれば、そこから空閑が姿を現した。
向こうは頭の後ろで手を組んで、もう終わったような雰囲気を出している。
空閑に敵意がないのを知り、米屋は国近からの通信に耳を傾けた。
煙幕の外は想像通りらしい。

「くっそ、緑川は安易に飛んでベイルアウトするし、佐鳥のやつまた外すし…」
「今日のくぐい先輩はワープがないからグラウホッパーをいれているんだ」
「マジかよ!あの人なんでも使うな!?…こっちの読みが甘かったか…」

グラスホッパーを使用して、別の建物へと移動したらしい。
今日は随分とアクティブな動きをするところを見ると、本気で国近を潰そうとしているのだろう。
大人げねぇと米屋は冷や汗をかく。
周囲の白い煙は消える気配がない。
誰が傍にいるか分からない状況で動けず、米屋は空閑の顔をうかがう。

「下手に出ると、京介が外にいるってわけか」
「そういうことですな」
「マジかよー」

天を仰ぐ。
空閑にその気がなくとも、ここから出れば、狙い打たれるようだ。
米屋の前から姿を消したのはこのためか。
完全に烏丸の存在を考えから消していたのが仇となった。
てっきり佐鳥を狙いにでも行ったのかと思ったが。ふと気が付く。

「おい、辻はどうした」
「はてさて?」
「…何から何まで、読み通りってことか」

先まで辻がいたはずなのに、いなくなっている。
つまり、そういうわけか。
米屋はあーくそと頭をかいた。
程なくして、国近からまた通信がはいる。
それは空閑も同じだったようだ。

「佐鳥先輩はベイルアウトしたらしい」
「全く、本当に怖ぇー人だよ。あの人」

どこまで計算してるんだ。
せめて何人か落とせるかと思ったが、一人も落とせないとは。
やっぱり作戦って大切なんだなとしみじみと感じた米屋。

この状況から、せめて誰か、空閑を落とせるかなと自信はないながらに考えてみたが、結局無意味だった。
もはや国近のアシストもないまま、米屋はくぐいに狙撃された。





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