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米屋が駆けつけると、丁度緑川が空閑の一撃を防ぎ、そこに辻が追撃を仕掛けようとしているところだった。
槍のリーチを利用して、辻の弧月を弾く。
米屋の登場を警戒したのか、空閑も辻の位置まで下がった。
槍を構えてちらりと緑川をうかがう。見たところ、まだかすり傷ほどだろう。

「わりっ、待たせた」
「よねやん先輩おそいー!」
「すっげー走ってきたって」

緑川がきゃんきゃん喚くのを笑って流し、辻と空閑に視線を戻した。

「お、これで2対2だな」
「空閑、予定通りいくぞ」
「了解デス」

予定通り、という言葉が引っ掛かったが、考えても分かる頭は持っていない。
空閑がグラスホッパーを使用して、空を駆ける。そちらに一瞬意識を持っていかれると、辻が米屋をぬけて、緑川を狙おうとする。
機動力の高い方から落とすつもりのようだ。
米屋はとっさに槍を持ち替えて、辻の足を狙う。
当然、確実に落とすには少し足らなかったが、牽制にはなったようで、辻が眉を顰めて、足を止める。

「っぶねー」
「……米屋」

辻と空閑が組んで緑川を落としに行けば、緑川はひとたまりもないだろう。
一瞬、どちらの相手をするか悩んだが、緑川は完全に空閑を狙っているし、辻相手だとどちらに転ぶかわからない。
米屋が辻を狙い、落とした方がはやいだろう。
アシストのうまい辻だが、1対1であれば米屋の方が今のところ勝ち越している。

「辻は俺が相手するから、緑川は白チビを相手しろ」
「りょーかい!」

緑川が空閑に飛びつき、米屋は辻に向かった。
弧月通しである以上、刃の強さは関係ない。
最近は足狙いの米屋は、槍を短めに持ち、足を狙いに行く。
弧月使いである以上、空閑のように身体から生やすことはできない。足が取れれば落とせたも同然だ。
米屋が一歩踏み込んで槍を振りかぶったところで、国近からの通信がはいった。

『狙撃!』
「っ、このタイミングで!?」

緑川か、米屋か、どちら狙いか。
慌てて下がって空を見上げたが、着弾ははやかった。
地面に刺さるように落ちてきた弾に、外したのかと一瞬思ったが、瞬く間に視界が白い煙に覆われた。

「煙…!」
「煙幕!?」

米屋と緑川の困惑した声が響く。
辻と空閑から驚いた声が上がらないと言うことは、計算通りということか。
周囲が見えなくなり、お互いの位置関係どころか、立地も把握も怪しい。
下手に動けなくなった米屋の耳に、緑川の声が聞こえてくる。

「こんなのグラスホッパーで」
『緑川飛んじゃだめ!』

国近の制止が聞こえた。



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