9 佐鳥がひょぁあと意味の分からない声を漏らした。 米屋は思わず吹き出して笑う。 『ごめんなさい外した!』 『佐鳥のバカ!』 『佐鳥先輩ちゃんと当ててくださいよ!』 『ごめんなさいぃいいいい』 国近と緑川の言葉に、佐鳥が土下座する勢いで謝っている。 その姿が容易に描けて、米谷はさらに笑った。 当真は落とされたので、スナイパーは佐鳥だけだ。 このままくぐいを削れないときつい。何が何でもとりたいところだなと、米屋は弧月を片手に周囲を見回す。しかし気配はない。 「京介はどこ行きました?」 『バックワーム起動してるみたい』 「あちゃー、仕方ない、緑川のところ行きます」 『うん』 辻も緑川の方に向かったと聞いていたので、米屋はひとまずそちらの加勢に向かうことにした。 空閑は防げても、辻まできたら流石に凌ぐのは厳しいだろう。 『佐鳥も一回、緑川の支援ができる狙撃ポイントに移動して。とりあえず一人減らそ』 『佐鳥、了解』 米屋は、やばい展開になってきたなぁと思いつつ、気持ちが高揚してくるのを感じた。 * * * 緑川は電柱の上で二人を指さして抗議する。 「ちょっとちょっと!2対1とか卑怯だから!」 「ヒキョウではないな。これはチーム戦だろ?」 「空閑の言う通りだ」 首を傾げる空閑と、それに同意する辻。 突如現れた辻により、空閑との一騎打ちを邪魔されてしまった。 チーム戦であることは承知しているが、折角のチャンスを邪魔されては文句の一つもいいたくなる。 バトルもそこそこに、緑川は地団太を踏む。 「俺の気持ちはもう遊真先輩との対戦なんだけど!?」 「気持ちは切り替えていこう」 「辻先輩、良いこと言うね」 「何で意外に息ぴったりなのさ!」 黒と白のコントラストと、意外にぴったりな息なのがさらにむかつく。 あの二人って別に接点ないよね!?と緑川が頭をわしわしとかきむしって悔しがっても、二人は全く表情を変えない。 「こちらもそろそろ動くか、空閑」 「了解デス、辻先輩」 「くっそぉ…もう絶対二人ともベイルアウトさせるから!」 二人がそれぞれ武器を構えたのを見て、緑川も渋々スコーピオンを構えた。 |