近づこうとする米屋を銃で牽制すると、くぐいから通信が入る。

『そろそろ来るぞー』
「はい」

その言葉を合図に、不自然ではない動きで烏丸は民家の上に移動する。
下から狙う米屋を避けるように、さらに上へ飛んだ。
間髪を入れず、三上から通信が入った。

『狙撃です!』

その言葉に顔を上げると、音もなくライトニングが迫っていた。
避けられない。

「っ」
「当真さんさっすが!…って、え」

米屋が笑ったが、直ぐに驚愕の表情にかわる。
烏丸を狙った当真から放たれたライトニングが、くぐいにより撃ち落とされた。
烏丸は民家の屋根に着地して、米屋に銃を向ける。

「読み通りだな」
「げー、狙撃を撃ち落とすってまじかよ……」

米屋が肩を竦める。まるで諦めたような仕草だったが、烏丸は銃を下さなかった。

「って思うじゃん?」

にっと笑いそう続いた米屋の言葉に、烏丸は表情に出ないものの笑った。
向こうはこの展開に読み通りだと思っているようだが、それはこちらも同じこと。

『狙撃です、くぐい先輩』
『オッケー狙い通りだな』

くぐいを狙って佐鳥から放たれた弾は、壁抜きで仕留めようとしたのだろうが、壁こそ破壊するがくぐいをベイルアウトさせることはできない。
米屋の顔に再び驚愕が浮かぶ。

「はっ!?」
「うまくいったと思ったでしょう、米屋先輩」

烏丸がそういうのと同時に空にきらりと光りが上っていく。
三上から聞かずとも嬉しそうな声が烏丸の耳を擽った。

『当真もらい!』

小躍りしていそうなほど嬉しそうな声に、ふっと烏丸は笑みをこぼす。
緊張感を打ち消してしまう無邪気さに烏丸は気を引き締めなおした。

「当真さん、ベイルアウトですね」
「おいおい…マジかよ」

引き攣った笑みを浮かべる米屋に、烏丸は用事は終わったと、屋根から路地へと飛び降りた。
直ぐにバックワームを起動して、三上の指示に従い細い路地を利用してその場から姿をくらます。
ちらりと振り返ったが、米屋が追ってくる様子はない。
路地での戦闘になれば長物の槍は不利だ。追いかけるのは賢明ではないと判断したのだろう。

ふうと息をつく。
烏丸の第一ミッションは終了だ。




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