作戦も何もなく、勢いよく飛び出して、空閑を狙う。
スコーピオンを振りかぶれば、同じくスコーピオンでガードされた。

「遊真先輩みっけ!」
「やっぱり一番に来たな、ミドリカワ」

跳ね返されて、緑川はグラスホッパーを使い空中を跳んだ。
電柱の上に立ち、スコーピオンを構える。

「今日は負けないよ」
「それは俺のセリフだな。こっちはつぐみさんのお菓子がかかってるんだ」
「え!?なにそれずるい!!!!」

勝ったらつぐみのお菓子で、そもそもくぐいの隊なんてずるすぎる!羨ましい!
緑川がこっちのチームより何倍もいいじゃないかとショックを受けていると、空閑が隙を逃さず斬りかかった。
斬撃を防ぐが、蹴り上げられた足から出されたスコーピオンが少し頬を掠った。
緑川は息をのんで、その場を飛びのいた。

「っ」
「ユダンタイテキだな」
「くっそー、今のはちょっとつぐみさんにつられただけだし!」

ずさっと地面に着地して、緑川は悔し気に反論する。
緑川は、トリオンが漏れ出す頬を擦って、スコーピオンを構えなおした。

「次はないから」

こうなったら、空閑に勝って、つぐみに褒めてもらおう。



****



米屋は左側から飛び出してきたものを槍の柄で受け止めた。
柄の部分は耐久力で劣るため、直ぐに振り払い、相手を下がらせる。

「おっと、辻か」

まさかバックワームをつけていて、位置がばれるとは思わなかった。
レーダーからは消えているだろうから、おそらくスナイパーのくぐいに見つかったのだろう。
こうなってはバックワームは役に立たない。
バックワームを解除して、槍を構える。

「受けて立つぜー」
「……悪いが、米屋。今回の相手は俺じゃない」

弧月を脇に収める辻に、一瞬「ん?」と思ったが直ぐに理解する羽目になった。
国近のアシストが聞こえたと同時にその場を飛びのいて下がる。

「っぶね!」
「どうも」
「京介かよ!」

米屋がいた場所に銃痕がつく。
角から現れたのは烏丸だった。
ずるいのは無しという話なので、ガンナーとして参加しているはずだ。
辻は烏丸の存在を確認して、米屋に背を向けた。

「後は頼む」
「了解です」

民家の中に姿を消した辻に、一瞬追うか悩んだ。
ガンナーであり射程距離がある鳥丸より、辻の方が相性がよさそうだが、米屋が背を向けた瞬間に烏丸が撃ってきそうでもある。
流石に2対1になったら厄介なので、大人しく烏丸の相手をすることにした。

「ま、京介でもいっか」
「………」

くぐいを狙いに行くつもりだったが、まぁ作戦なんてあってないようなものだ。
数を減らせればなんでも有だと国近も言っていたし、こむずかしいことをごちゃごちゃ考えるのが苦手な人間のあつまりなので、シンプルに力で圧していくとしよう。
米屋は槍を鳥丸に向けた。





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