大人 ぬえ、荒船、当真、犬飼
子供 影浦、北添、穂刈、村上










玄関から今にも飛び出しそうなその背に慌てて声をかける。
寒がりのくせに手袋とダウンだけとかそんな軽装で飛び出たら瞬殺されるぞ。

「待った待った!カゲ絶対それじゃ風邪ひくから!」
「べつにへいき」
「平気じゃないでしょ!やせ我慢しないの!」

しゃがんで俺は手にもっていたマフラーとイヤーマフをカゲに装着する。
よし、かわいい。間違えた、防寒はばっちりだ。
隣で靴を履いていた村上にもマフラーをつけてやる。

「村上もしようね。穂刈と北添は逆に汗かくからしなくていいよ」
「はーい」

自分もしてもらえると思ったのか北添と穂刈がこちらをのぞいてくるので必要ないと伝える。
二人は体温が高いので厚着させると汗をかいて逆に風邪をひく。

「ぬえ、俺にはー?」
「子供と同列になんじゃねーよ、自分で判断して自分でつけろ」
「荒船酷い!」

わんちゃんと荒船が靴を履きに玄関にやってきた。
二人ともわりと軽装だが、まぁ鍛えてるし、こいつらは自分で自分の管理ぐらいできるだろ。
わんちゃんは多分お洒落のために厚着はしないとか言い出すタイプだけど。

「お前が風邪ひくって」
「うお」

突然首が締められて命狙われてるのかとびっくりしたが、どうやら違ったらしい。
首にぐるぐると巻き付けられたのはマフラーだった。
見覚えがないので当真のものだろうか。
俺はそれに顔を埋める。

「おおう…温かいなりぃ……」
「突然のコロスケ」

俺と当真のやり取りに荒船とわんちゃんが噴き出す。
カゲたちは、やっぱり世代間ギャップで伝わらなかったようだ。
コロスケ?と首を傾げている。

俺は立ち上がって靴を履く。
クリスマスにわんちゃんがくれたやつだ。
新年になったのでおろしてみたが、足にピッタリ過ぎて逆に怖い。いつ測ったんだ。

「よしよしじゃあ準備OKかな?準備ができた人は、はぐれるから手つないでね」
「いぬかいはぜってーやだ」
「悲しい!!!いいもん!俺ぬえとつなぐもん!」
「うるせーボケ!北添とつないでろ!」

俺の手を握ろうとしたわんちゃんは、あえなく荒船に殴られて北添に慰められていた。
お前が「もん」とか言ってもちっとも可愛くねーぞ。
俺はカゲに手を伸ばす。

「じゃあカゲは俺とつなごか?」
「……おう」

大人しく握り返す小さな手に俺はほっこりして笑みがもれる。
まったく正直じゃないんだからー。

「鋼」
「穂刈、つなごうぜー」

村上と荒船、穂刈と当真もそれぞれ手を握ったのを確認する。
うちはちびっこいのが4人もいるので目を離すと1,2人消えているときがある。
そんな状態で人混みのおおいところへ外出なんてしようもんなら迷子アナウンス行き決定なので、手を握ることにしている。
子供ら、というかカゲが最初は嫌がったが村上がアナウンスのない場所で迷子になって以来つなぐこと自体はいやがらなくなった。
あれはこっちも肝が冷えたしなぁ。まぁ今もわんちゃんとつなぐのだけは絶対嫌がるけど。

「それではいざ初詣!」

俺がそういえば、村上と穂刈と北添が「おー!」と繋いでいない方の手を上げた。


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