東がまぶしさに気が付いて目を開ければカーテンから日差しがのぞいていた。 横を見れば隣で寝ていた存在はなく、シーツは冷たい。 枕もとの時計を見れば10時を過ぎていた。 夜勤明けのため寝すぎてしまったわけではないが、今日は一日寝て過ごすわけにはいかないので身体を起こす。 東が寝室をのっそりと出れば、ソファーに座ってテレビを見ているぬえがいた。 どうやら一人のようだ。 その背に声をかける。 「おはよう、あけましておめでとう」 「あ、おはよう。あけましておめでとうございます。夜勤おつかれさま」 「ありがとう」 ぬえがにこりと笑って立ち上がる。 コーヒー飲む?と聞かれて頷けば、ぬえは一度立ち止まってぺこりと頭を下げた。 「今年もよろしくお願いします」 「こちこそ、よろしく」 ふっと笑みがもれる。 夜勤だったせいか日付感覚がない。 そのためぬえとのそのやりとりに新年なんだなぁと実感した。 ぬえの視線が下がる。 「迅くん」 振り返ればふらふらとしながら迅が姿を現した。 眠そうに眼をこする姿が何度見ても微笑ましい。 ぬえがしゃがんで迅の寝癖を直す。 「おはよう、起きた?」 「おは、よう」 まだ眠そうな声にぬえがくすりと笑う。 そんな二人が微笑ましくて東は胸が暖かくなった。 迅がぬえと同じようにぺこりと礼儀正しく頭を下げる。 「あけましておめでとうございます」 「あけましておめでとう」 迅が東の存在に気が付いたのか顔を上げてへらりと笑う。 東は迅へと手を伸ばして、抱き上げた。 ずっしりと重たい。迅もだんだんと成長していることに驚き、そして嬉しくなる。 「あずまさんおつかれさまです」 「ありがとう。良い子にしてたか?」 「良い子だったよ!頑張って東が戻ってくるの待ってたんだけどね」 「そうだったのか。悪いな」 東が夜勤の時はいつも頑張って起きてるらしい。 日付前には寝落ちてぬえがベッドにへ運ぶと聞いている。 ぬえが仕事で遅い日はその逆を東がしているので、中々三人揃わないのが寂しいのだろう。 東もぬえも子持ちだからと融通を聞かせてはもらっているが互いに多忙だ。仕方無いと言ってしまえばそれまでだが、寂しい思いはできるだけさせたくない。 今年はもう少し一緒にいられるようにお願いしてみよう。 「眠い?」 「だいじょうぶ」 ぬえの問いに首を横に振る。 どうやら昨日は大分頑張ったようだ。 東は用意していたものを差し出す。 「じゃあそんな良い子には、ほら」 「ありがとう、ございます」 「わーお年玉!良かったね、迅くん」 迅は東からそれをもらってうれしそうに笑う。 しかしポチ袋の存在に、何故か迅よりぬえが嬉しそうだ。 「何に使おうか?ゲーム買う?」 のりのりなぬえに東が笑うと迅が首を横に振った。 ゲームよりぼんち揚げだろうなと思っていると、予想外の言葉が迅の口から出た。 「これで、あずまさんと、ぬえちゃんと、ぼんちあげたべる」 東が驚いた顔をすると迅は満足そうに笑った。 「か、かわいい………」 「ぬえ、新年早々床に沈むな」 |