端末を操作してたいちょーから転送されてくる捕獲リストに目を通す。
大分つかまってるな。

「あと誰だ?」
「うーんとね、カゲと北添、村上、穂刈…、歌川と菊地原、出水と太刀川さん、三輪と米屋…辻ちゃん…」
「鴇崎さんもだろ」
「あ、そうそう。でもあの人は多分たいちょーが何とかしてくれるよ。というか、多分たいちょーしか捕まえられないだろうし」
「…?どういう意味だ?」
「ん?ああ…お兄は一度選んだ人を間違えないってこと」

端末をしまいながら荒船にそう答える。
お兄は誰にでもいい顔するけど、それは始めから内と外をきっぱり引いてるからだ。
俺みたいにはっきりした態度は示さないけど、ああ見えてかなり警戒心高いから。
俺が何でもないことのように言うと、当真が頭の後ろで腕を組む。

「お前んとこってまじで隊長好きだな」
「それは許せる」
「なんで犬飼が許すんだよ」

わんちゃんの発言に荒船が突っ込む。
あ、そこは許せるんだ。
それに俺は笑った。

「太刀川さん、さっさと見つけないと勢いあまって外とか行くんじゃね?」
「すげーわかる」
「太刀川さんは忍田さんとか東さんが捕獲してくれるよきっと多分恐らく」
「まぁ…俺らが見つけたところであの人をやすやすと捕獲できる気がしねぇな」

どう考えても大人になった太刀川さんが子供なんだから、子供の頃の太刀川さんなんてさらに輪をかけて子供なんじゃないだろうか。
何だったら出会いざまに斬られてもおかしくないかもしれない。
野生の太刀川さん怖すぎかよ…。

「つかカゲ全然見つかんねーな」
「サイドエフェクトあっから、人が近づいたら逃げてるんじゃねーの?」
「ああ、なる」
「焼き鳥とか焼いたら来ないかなぁ?」
「来る前にスプリンクラーが点いてびしょ濡れになんぞ」
「止めよう」
「そうだなー、逃げても簡単に足がつきそうだしな」

悪戯をするときはバレずにやるのが俺と当真のポリシーだ。
バレて叱られるとかダサいからね。
そして俺はそろそろイライラしはじめていた。
伸びてくるわんちゃんの手をたたく。

「ていうか!さっきからさぁ!人の手を!握ろうとすんな!」
「ちぇ、バレちゃった」
「気が付かないやついないでしょ!」
「いいじゃんー、減るもんじゃないし」
「減るとか減らないじゃなくて俺がげんなりするからやめてくれ!」

なんで男同士で手をつなぐの!?引率なの!?介護なの!?
さっきからポケットから手を出していた俺の手を何度も触ろうとしてくるからそれをひらひらと避けていたけど、流石にうざい。
俺がふしゃーと猫みたいに怒ると、わんちゃんは拗ねたように口をとがらせる。
全然可愛くなくてほんとげんなりする。

「くぐい、ん」
「さんきゅ」

当真がポケットに手を入れたまま腕を少し開く。
俺はその腕にしがみついてわんちゃんとの距離をとる。
当真にくっついてればわんちゃんも手を出してこないだろう。

「うっそー…当真の腕にしがみつくとかなんなの俺を嫉妬で狂わせてどうしたいの」
「お前は一遍子供に戻って色々やり直して来い」

荒船がわんちゃんを殴ったところで、がやがやとした声が聞こえてくる。
声がする方に視線を向ければ階段下で子供が女性に追いかけられていた。

「あ、あれ逃げてるの辻じゃね?」
「…ああ、オペレーター達から逃げてんのか」
「辻ちゃん女子苦手だからね」

俺はその姿を確認したところで、手すりをふわっと乗り越える。
これは絶対に捕獲せねば。

「辻ちゃん!」
「うぇええええ!?くぐい!?」
「あ、飛んだ」
「おいっ…!」

焦るわんちゃんと荒船の声と、呑気な当真の声。
直ぐにトリガーを起動する。
俺のトリガーは今回の改修部分は事前にリセットしてもらったので使っても問題ないのだ。用意がいいだろう?
換装体となったことで着地の衝撃が吸収…されたのは、俺のトリガーについたたいちょーのオリジナル機能のおかげだ。
そのまま俺はしゃがんで走っている辻ちゃんに手を広げる。

「おいで」

すると辻ちゃんが一目散に俺に飛び込んできた。
あまりの勢いに腹部に打撃を受けたが、そんなことは気にならない。

「………!」

なんだこの感動は。
ぎゅうぎゅうと抱き着いてくる辻ちゃんの可愛さに俺は満面の笑みを浮かべる。
女性陣には悪いけど辻ちゃんは俺がもらったぜ。




「あいつめっちゃ満足そうな顔してるぞ」
「すげーデレデレしてる」
「同じチームメイトだけど辻ちゃんだけ良い思いするなんて…!なんで俺も小さくならなかったんだろう!?今からでもトリガーを使えば……ぐふっ!」
「余計な手間取らせんな」
「大分深く刺さった、いってぇ……つか、さっきと矛盾してますけど……」





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