子供たちを内勤の人に任せて、荒船と当真と共に施設内を回る。
といっても小さい子供をこの広い施設内で簡単に探せる気がしない。

「どこにいるんだ?」
「子どもだから隅っこに隠れてるとかあり得るな」
「とりあえずカゲを確保したい」
「ガキの頃のカゲってどんなんだろうな?」
「泣き虫だったら全俺が歓喜」
「鬼かよ」
「だってかわいいじゃん!絶対かわいいじゃん!」

カゲの小さいころとか絶対可愛い気がしてならない。
俺がそう主張すると二人は苦笑いを浮かべた。
何故だ。
あと穂刈と村上もぜひ見つけたい。
穂刈にいたっては昔からあの無表情だったのかがえらい気になるじゃないか。
しかし、俺一人じゃなくてほっとした。
荒船と当真まで子供になってたら俺軽く現実から逃げ出して家に帰ってるところだった。

「あれ、嵐山さんと来馬さん?」
「あ、もしかして柿崎隊?」
「やあ。くぐいくん当真くん荒船くん」

嵐山さんと来馬さんは既に子供を確保しているらしく、柿崎隊を抱っこしていた。
ボーダーにおいていい人ランキング上位の二人の手にかかれば捕まらないことはないよなぁ。この人たち面倒見良いし優しいし。

「嗚呼、柿崎達は捕まえられたんだが、影浦に逃げられてしまって」
「え!カゲいたんですか!?どっちにいきました!?」

俺ががたっとすると二人に笑われた。
俺らが18歳狙いで探しているのがばれているようだ。
嵐山さんが指さす。

「向こうの方だよ」
「カゲは俺に任せてください!」

そう言うと、よろしく頼むよと俺の頭を嵐山さんは撫でてラウンジに戻ってしまった。
子供がいるのになんで俺の頭をいちいち撫でていくのか。甚だ疑問だ。
俺がなんとも言えない顔をすると、荒船たちはにやにやしていた。
むかつくから殴ろうしたら、何かが叫びながらこちらに向かってくる。

「ああああああ!!!くぐいーーーー!!!!!」

振り返らずともそれがなにか分かったので俺は当真を盾にそれを避ける。

「さっ」
「なんで!避けるの!」
「反射的に」

抱き着かれると分かっていて待つような男ではない。
そもそもなんで抱き着かれる前提なんだよ、お前俺のなんなんだよ。
家からこちらにようやく到着した犬飼ことわんちゃんは、なんかオッシャレーな私服だった。
そしてわんちゃんは俺を見て残念そうに床に膝をつく。

「ていうかぁああなんでくぐいはなってないのぉおおおお!!!!ちっちゃいくぐい堪能したかった!やわらかいほっぺ触ったり!!!まだ成長してない部分とか開発して俺のものにぐふっ」
「黙れ」
「なんだこいつ、こわい」
「最近こいつ欲望を隠さなくなってきたよな」

流石に危機を覚えたのか俺をかばうように当真と荒船が一歩前にでて、ちゃらい茶髪を荒船が殴った。
最近わんちゃんは心の声がダダ漏れで俺でも身の危険を感じる。
精神科をおすすめした方がいいんだろうか。
荒船に殴られるわんちゃんからそっと目を離すと、自販機の隙間で何かが動くのが見えた。

「お」

第一村人ならぬ第一子供発見。
俺はそちらにとてとてと近づいて恐々とこちらをうかがう子供に目線を合わせるようにしゃがむ。
ふわふわの茶色の髪は間違いない。

「おいでおいで」
「あ、もしかして佐鳥か?」
「まじで?」

俺の行動に気が付いたのか荒船たちがこちらにくる。
するとでかいし顔が怖いのが近づいてくるから子供には恐怖の対象だったようで泣き始める。
それに焦る。

「ああああ!泣かないで!ちょ、お前ら居ると泣かせるからどっかいって!」
「ひでぇ」
「まぁ、否定しはしない」

三人がちょっと離れた場所に行ったのを確認してから俺は再度手を伸ばす。

「ほらほら泣かないで」

にっこり笑って向こうから来るのを待つ。
泣いていた佐鳥は涙にぬれた目でこちらの様子をうかがうようにじっとみる。
それを気長に待つと、ようやく安心したのか俺の腕の中に入ってきてくれた
抱きしめて抱っこする。
子供独特の柔らかさと、べろべろに泣いている佐鳥が佐鳥らしくて可愛い。
泣き虫だったんだぁ。あ、成長しても泣き虫か。
俺は三人を振り返る。

「えへへ、佐鳥ゲットした!かわいい!」
「意外に面倒見いいよな………」
「……やばい、結婚しよう」
「………」

不穏な言葉が聞こえた気がしたが聞き流すことにしよう。
俺の服をぎゅっとつかむ佐鳥の背中をぽんぽんと撫でて落ち着かせながら、次の目標を探すことにする。

「18歳の残りと辻ちゃんと三輪はゲットしたいなー」
「ポケモンか」





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