1 慌ててラウンジに向かい、その光景を目にした瞬間俺はその場で見事に崩れ落ちた。 「あ、たいちょー」 弟くんがなんか小さいかわいい子抱いてる。 小さい子が小さい子を抱いてる可愛さは、疲れきっている俺にはかなりのダメージだ。 駆け寄ってこようとする弟くんを制する。 「待って、今あまりの可愛さといろいろな出来事に現実が受け止められないから待って」 「何言ってんだ」 可愛いともだえる前に俺はちらりとその奥の光景を見てしまった。 ここはボーダーで、子供はもちろんたくさんいるけれど、4歳5歳の子が来るような場所ではない。幼稚園じゃないんだから。 それなのにラウンジには子供がいっぱいいて、その周りを荒船くんや当真くんが子供がどこかにいかないように見張っていた。 察するに、弟くんと荒船くんと当真くんは無事だったら組らしい。 俺は漸く現実を受けれる気になり立ち上がって弟くんの腕の中の子供を見下ろす。 「この子、もしや、ヒワちゃん?」 「うん」 くりっとしたキラキラした目は完全にヒワちゃんだ。 病気をする前のヒワちゃんを思い起こさせる無邪気さ。 俺はすっとスマホを取り出す。 「とりあえず、弟くんとセットで写真とらせて」 「うん?」 素早く写真をとって速攻待ち受けにした。 俺はその待ち受けをみてしみじみとつぶやく。 「かわいい。俺もう死んでもいい」 「生きろ。とりあえずこの問題が解決するまで生きろ」 解決させる必要などないのではないだろうか。俺は大層癒されている。 ヒワちゃんが弟くんの胸にしがみついていた両手を俺に伸ばす おじさんに抱っこしてほしいのかい?かわいいねぇ。 完全に変態になった。 ヒワちゃんを抱っこする。 「さて、じゃあ、とりあえずあらましを説明してくれ」 子供独特のやわらかい肌と愛らしい表情に癒されながら、とりあえず俺は状況を聞き出すことにした。 現実を受け入れよう。 「うーんとね。トリガーをつかったら、子供になった」 簡潔明瞭すぎて経緯がわからない、 俺が詳細を聞くと、弟くんは言葉を選びながら分かりやすく説明してくれた。 いつもの18歳組で仮想戦闘ルームにいた。 そこで影浦くんや村上くんの戦闘を見ていたら、突然トリガーを使用していた人間が子供になってしまった。 観戦していた組は無事で混乱したが、その場にいた子供が思考まで幼児化してパニックでわらわらと逃げ出そうとしたので、慌てて回収してまわり、椅子などが少なく広いこのラウンジに移動させたらしい。 人手が足らずその間に結構な人数が逃げたらしい。 そしてトリガーの事だったので俺に連絡した、ということで。 「………技術的ミス!?」 「うん」 結構前にトリガーのメンテナンスは俺の手から離れているが、研究室の事は全部俺の管理下にある。 なんてこったい。 俺は素早くPHSで室長に報告をいれる。 「鬼怒田さん大変です!トリガーのメンテナンス失敗して隊員が幼児化してます!」 |