16











向かってくるモールモッドへと向き直ると通信が入る。

『左』
「りょーかい」

東の指示に従い右へと避けると、左からバムスターが現れた。
下がったところでモールモッドが突進してくるのでそれを上へと飛んで避けて、背中のつなぎめへと弧月をふるう。
しかし強化されているのが刃が弾かれた。

「む、硬い」
『押し負けるなよ』
「そこは東の力でなんとか」
『甘えるな』
「めっちゃ厳しい。悲しい」

東がバムスターを撃ち牽制する。
その隙に俺はモールモッドを片付けてしまうことにした。
俺は隊章の被せ物を弧月の柄にセットする。
これで弧月の刃にトリオンの流し込みが可能となり切れ味を上げることができる。俺が作った、拡張パックみたいなものだ。
モールモッドがもう一度向かってくるのを下から斬り上げて壊す。
続いてバムスターにそのまま向かう。
長い首を避けて背中へと回り込み、首を飛ばす。
がくりと動かなくなったバスターの背中で俺はふぅと息をつく、

「これで終わり、かな」
『お疲れさん』
「前線一人はきついね」
『そつなくこなせてたくせに何言ってるんだよ』
「気持ちの問題ですー」

いつも最前は任せているのでこうも動かされると疲れる。
そりゃ人相手じゃなければ斬れるけどさぁ…。

『トリガー、修正が入り始めたらしいな』
「うん、一斉に修正はできないみたいだから、サイドエフェクト有りの子から、順次ね」

悲しいような嬉しいような複雑な気持ちだが、若手はやりきったようで無事にトリガーの改修が行われはじめた。
残念なことに一斉に修正をかけるところまではたどり着けなかったようだが、なんとか二日目に間に合ったので、俺としては後輩が頑張ってくれてとても嬉しい。
でも、小さいみんながもう見れないのはとんでもなく悲しい。

『ヒワはどうするんだ?』
「そりゃ戻すよ。ヒワちゃんはやっぱり22歳のヒワちゃんが一番だ」
『そうか…』

小さくなってもトリオン体である限り病気が無くなるわけじゃない。
それに、俺はやっぱり病気があっても、大きいヒワちゃんがいいなぁ。

『二宮隊はどうだった?』
「どうもこうも、つつがなく淡々と…犬飼くんってすごいね、なんかノンストップだったわ」
『なにがあったんだ?』
「思春期だった」
『……は?』
「久しぶりに、若いってすごいって思った」
『そ、そうか』

犬飼くんも凄かったけど、自分のスーツ姿があまりにもコスプレ過ぎて精神的ダメージだった。
今も東隊の隊服を着ているが、このしっくりこない感じ。
あんまり愛着とかないつもりだったけど、やっぱり自分の隊が一番自分にあっているんだなと実感した。

「なんか今回の件で、うちの子が他の隊の服着てるとちょっと複雑な気持ちになるね」
『自分の隊の隊員なのにって思ったか?』
「うん。取られちゃったみたいで、ちょっと悔しいなぁって」

隊章は辛うじてうちだったから、盛大なコスプレだと思えばあれだけど、IF的な未来というか。
俺が彼らに声をかけなければ、ああなっていたのかもしれない。そう思うとちょっと怖い。
そんなことより聞いてくれ。

「それと同時にうちの子たちどこの隊服着てもめっちゃ似合っててやばいなって再確認した」
『…へぇ』
「鴇崎家の血は凄いなと」
『へぇ』
「うちの隊服で大丈夫かなってちょっと不安に」

他の隊の隊服がもうべらぼうに似合いすぎてだな。
俺は頭を抱える。
もっとこう、もっと格好良い感じにしてあげるべきなの!?
でも俺も25歳だから着られる服に限界が…。
東が喉の奥で笑う。

『隊服も、隊章も、4人にあわせて変えたんだから、自信持て』
「うう、そりゃそうだけど…」

A級にあがったさいに隊章を作り直した。
4人それぞれが切り札となりえるような、どんな手札にもなれるような、そんな意味を込めてトランプにした。
本当はデザイナーに頼むみたいだけど、俺は自分の隊は自分で作っていきたいから、みんなの意見も入れつつもそもそ作ってみたわけだけど。
こうやってだんだん、3人だった時のものがなくなっていくんだろうな。
東はそんな俺の気持ちを悟ったのか、昔を思い出したように口にする。

『俺は前の、和装も好きだったけどな』
「あれはちょっと次元が違ったよね。夜鷹が決めたとはいえ今思えばすごい恥ずかしい。今更着れない」
『そうか?評判よかっただろ』
「良かったのか?着る人を選ぶとさんざん言われまくったけど」

和装の隊は後にも先にも前のうちぐらいじゃないだろうか。
鴇崎くんたちが入って速攻やめたけど。
今思えば黒歴史だなとしみじみ思った。








「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -