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引継ぎ先にいた、嵐山隊の姿につぐみは確信した。

「鴇崎くん、今すぐにでも広報になれるよ」
「そうですか?」



***




嵐山と鴇崎が揃って立っているだけで女性たちは浮足立つのに、今日は鴇崎が嵐山隊の隊服を着ているとあってさっきから入れ代わり立ち代わり人が訪れている。

「あんまり赤って着ないからしっくりこないね」
「確かに見かけないな。でも似合ってるぞ」
「ありがとう」

嵐山隊の真っ赤な隊服が珍しいのか服を何度も見ている鴇崎。
色々と大人の事情によりトリガーが改修されて先ほど元に戻った。
二宮や加古は舌打ちしていたが、当の本人は子供の頃の記憶は曖昧らしく、子供になっていたというのも実感がないらしい。
戻るや否や任務に放り込まれているが、全く堪えてはいない様子で涼しい顔で嵐山と会話している。

「今日広報の仕事なくて良かったね」
「不幸中の幸いだな。まぁあったら鴇崎と行く感じになりそうだけど、根付さん的に」
「えー……俺、嵐山隊じゃないから」
「今は、嵐山隊だろう?」

隊服を着ている以上、隊長の指示には絶対だが。
鴇崎はちょっと肩を竦める。

「嫌そうな顔するなよ、傷つくだろう」
「よく分かったね」
「何年一緒にいると思ってるんだ」

どうやらそこそこ自分の隊を気に入っている様子で、いくら嵐山といえど他の隊は嫌らしい。
嵐山は全く気にした様子はなく、いつも通り爽やかに笑った。
そして、鴇崎の腕の中にいる存在をのぞき込む。

「出水、鴇崎に抱っこされてる時は大人しいな」
「そう?」
「俺が抱っこしてみるとさ」

嵐山が出水の脇に手を差し込んで抱き上げようとすると、うごうごと動き出して逃げようとする。
落ち着きのない動きに嵐山が苦笑する。

「ほら」
「出水くん、落ちちゃうよ。おいで」

こぼれ落ちそうな出水へと鴇崎が手を伸ばすと出水はすすんで鴇崎の腕の中へ飛び込んだ。
もぞもぞと動いて定位置を見つけ、そして静かになる。
嵐山と鴇崎はそろって首を傾げる。

「なにが違うんだろうな?」
「抱っこなら嵐山の方がうまいと思うけどね」

兄弟が多い嵐山の方が子供の扱いになれているはずなのに、出水は鴇崎の方がいいようで。
何が違うのかと首を傾げあう二人に、遠くからその様を見ていたくぐいが顔を引くつかせる。

「なにあれ、夫婦?」
「パパよりママがいい、嵐山家の日常」
「しっくりきすぎて納得しかけただろ」

当真や荒船も同意を示す。
どうやらくぐいの感じた印象は間違っていなかったようだ。
どうみても休日の夫婦と子供だ。
本当に出水が哀れだ。
子供になってなお鴇崎が好きなのに、わかってもらえていないどころか、二人の子ども扱いで。
くぐいはスマホをとりだして三人を枠内に収める。

「写真とってあとで出水に見せてやろ」
「泣いて喜ぶぞ」
「嵐山さんとお似合い過ぎて泣けるけどお兄に抱っこされたのは嬉しいの略?」
「そー」
「出水に心底同情するな」

はやく元に戻らないと取られるぞと、鴇崎の胸にしがみつく存在に、三人は同情した。







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