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上層部のメンバーが揃った会議に、俺も無理やり引きずられて参加となってしまった。
冬島さんは免除で俺は免除にならないなんて、そんな…、そんな馬鹿な…。
俺は部屋の隅で溜息を呑み込み、膝の上の子の背中を撫でる。
忍田さんが部屋をぐるりと見回してメンバーを確認し口を開く。

「それでは今後の方針について」
「ちょ、ちょっと待ってください」
「結城、それはなんとかならんのか?」
「いやー、そう言われても、ぴっとり貼りついちゃってて…」

根付さんがこちらをちらちらと伺い、鬼怒田さんが顔を顰める。
それに俺は曖昧に笑った。
俺にくっついているのは、林藤さんにくっついてやってきた迅くんだ。
俺を視界に入れた途端に走ってきて、そのままぴとっと。
引き剥がそうとしても全く離れなかったのだ。
あんまり無理意地するのも可哀想で、つれてきてしまった。
林藤さんがにやにや笑う。

「迅がそんなに懐くなんて流石だなぁ」
「アハハ…」
「子供相手だからってへらへらしおって」
「鬼怒田さんだってさっき雨取ちゃんにへらへらしてたじゃ」
「何か言ったか?」
「いえ、別に、なにも」

先程まで鬼怒田さんは雨取ちゃんにでれでれだった。
孫を前にするおじいちゃんみたいだった。
エンジニアは全員それを生温かい目で見守ったわけだが、その出来事を棚に上げていると思う。でも雨取ちゃんが本当に小さくて可愛かったので仕方が無いとも思った。
唐沢さんが煙草を咥えながら、間に入ってくれる。

「まぁまぁ鬼怒田さん、根付さん、彼は小さいですが確かに迅くんですし、いいじゃないですか」
「唐沢さん……ありがとうございます、でも煙草は子供に悪影響なので今は禁煙でお願いします」
「おっと、そうだったね。すまない、癖でね」

今にも火を付けそうだったのでそっとお願いすると、唐沢さんは肩を竦めてそう言った。
申し訳ないと思いながらも、柔軟な唐沢さんに甘えさせてもらった。

「話を進めよう。それでトリガーの方だが、結城くん修正はうまくいきそうかい?」
「進捗で言えばあまり芳しくないです」
「結城!」
「うっ…じゃあ俺にメンテナンスさせてくださいよ」
「それは駄目だ!お前がやったんでは後輩が成長せんだろ!」
「なにも今このタイミングじゃなくても…」

鬼怒田さんが俺にふんと鼻を鳴らす。
文句言われても、俺に絶対手を出すなって言ってきたのは鬼怒田さんだ。
今回は若い子を中心に解決させるっていう考えはいいとして、でもこのタイミングじゃなくてもいいんじゃないですかね。
わりと一大事だと思うんですけど。今近界民に攻めてこられたら防衛出来ないよ…。

「幸いなことに好意的なご家庭が多かった。2日くらいであれば時間は稼げるだろう」
「はい。鬼怒田さん、せめて雷蔵くんはつけてあげてもいいですか?」
「…仕方ない」

流石に若手が可哀想過ぎる。
何をすればいいのかも分からないのに、解決だけしろなんて無茶ぶりにも程がある。
せめてもの手助けは、雷蔵くんにお願いしておこう。
これで2日以内という目標はクリアできるはずだ。

「あと、サイドエフェクトを持つ子は、優先的にトリガー見ていただけませんか。ヒワちゃんは今の方が元気そうだけど、影浦くんとか菊地原くんが、きつそうです」
「……そうだな、鬼怒田さん」
「分かっとる。既に指示済みだ」

その言葉にほっとした。
後天的にサイドエフェクトを持つ子は、幼少の頃は関係ないけれど、生まれつきサイドエフェクトを持つ子は、辛いだろう。小さい身体に我慢させるのは忍びない。
菊地原くんや影浦くんは子供たちを集めた部屋とは別の部屋で様子を見てもらっている。
そうじゃないと苦しそうで。
ずっとああやって生きてきたのだなと思うと、少しでもはやく何とかしてあげたかった。
迅くんやヒワちゃんは、きっと今の小さい身体の方がいいのだろうけれど。
二人に小さいまででいられてはボーダーが困ってしまう。
俺にくっついたままぴくりとも動かない迅くんの背中をなでる。
なんだか不思議な感覚だ、あんなに頼りになる迅くんが今はこんなに小さい。
そして俺はもう一つ言わねばいけない事があった。

「それとですね」
「なんだ、まだあるのか」

非常に言い辛い。
特別扱いみたいになってしまう。
けれど、放っておくことは出来ず。

「くぐいに聞いたのですが、どこからか話しがもれたみたいで、鴇崎くんのご両親がお怒りで…」
「なんだって!?」
「なに!?それを早く言わんか!」

根付さんと鬼怒田さんが声を荒げる。
唐沢さん達も顔を歪めた。
そりゃそうだ。鴇崎くんのご両親の怒りを買う訳にはいかない。

「不味いな……後で私からも謝罪を入れておきます」
「…結城、鴇崎のトリガーのメンテナンスを最優先にしろ」
「そうですね、結城くん頼む」
「はい」

だって、ほら、鴇崎くんのご両親って影響力がすごいから。スポンサーでもあるし。
日本にはいらっしゃらないから黙っていてもいいかなぁと思ったんだけど、耳が早いみたいでバレたよね。
弟くんから聞いて俺は久しぶりに冷や汗をかいた。
最悪鴇崎くんがボーダーを辞めさせられてしまうところだった。
特別扱いで申し訳ないが、鴇崎くんのトリガーについては俺が緊急で見させてもらうことにした。
色んな意味でそれには少し安心した。
東に預けてきたけれど、加古ちゃんとか二宮くんが何するか分からないから心配だったし。
迅くんがごそごそと動いて俺の腹に額をぐりぐりと押し付けてくる。くすぐったい。

「それで、最大の問題の、シフトについでですが…」

迅くんの頭を押さえてちょっと押し戻して抵抗するが、迅くんは離れたくないのか、俺の服をぎゅっときつく握った。
なんだよ、かわいいじゃないか。

「結城くん」
「え、あ、はい」

トリガーの話は終わったからもう関係ないと完全に油断していた。
俺は慌てて顔を上げて返事をする。
全員がこちらを向いていてちょっと怯んだ。
忍田さんが神妙な顔で口を開く。

「君には非常に申し訳ないのだが……隊を解散してくれないか」
「へ…?」

全然言っていることの意味が分からないのは、話をきいていなかったせいなのだろうか。








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