9 端末をポケットに仕舞って、俺は大きく伸びをする。 「さー、遊びはここまでだ」 生身で色々歩きまわって疲れたよおじさんは。 口にせずともなんとなくみんな同じ事を考えているようで、同じ方向へぞろぞろと向こう。 穂刈たちは勿論連れていく。 これからお迎えに行くのに、退け者つくっちゃ可哀想でしょう。 「なんとなく場所分かるよねー」 「単純だからな」 「お迎え行きましょー」 「一番手のかかる子の?」 「くぐいと同じくらいめんどくせーからな」 「おい」 俺を貶すんじゃない。 屋上の階段手前にある自販機を見て、買っておこうと思い立った。 多分ほら、寒いから。 「ちょっと待ってて。わんちゃん、手伝って」 「おっけー」 電子マネーで飲み物を人数分買う。 子供が飲める温かい飲み物は蜂蜜レモンしかなかった。ココアもいれておけよ、俺もココア飲みたいのに。我慢できる大人だからおしるこでいいけどね。 一人じゃ持ちきれないのでほぼわんちゃんに持ってもらって輪に戻る。 いやこれ、ちょっと離れたから分かったけど人数多すぎ。大分規模の大きいパーティーだよ。もはやギルドだよこれ。俺ギルドマスターになりたい。そして辻ちゃんと三輪を部下にしたい。 そんな妄想はともかく、当真達にコーヒーを差し出す。 「はい」 「ゾエ達も喉乾いたろ?」 わんちゃんが子供たちに飲み物を呑ませていて、意外に面倒見がいいのを見守る。 まともにしてればまともなのになぁ。 俺はおしるこを開けずに手に持ったままにする。 喉が渇いたわけじゃなく暖をとる為に買っただけだ。 それを持って俺たちは屋上へと続く階段をあがった。 扉の前のひんやりした空気に一瞬怯んだが、躊躇するともっと開けるのが辛くなるのでばっと勢いよく開けた。 俺は直ぐにパーカーのチャックを上まであげておしるこを両手で握る。 「あらやだ、寒い」 「さみー」 「うっわ、さむ」 「風邪ひきそー」 想像以上に寒い。 周囲をぐるりと見渡せば、ぽつんと一つ、小さな背中。 ほらやっぱりここにいた。 「お、いたいた」 「カゲ」 当真達が声をかけるとちっこくなったカゲがびくりと身体を震わせた。 こちらを睨んで、完全に威嚇しているが、そんなの18歳組はなれたもんで。 「お待たせー」 「ここマジさみーな」 「風邪ひいたらカゲに慰謝料でももらうか」 「その前にカゲが風邪ひくだろ」 まぁ子供になったがなってなかろうが、俺らはつまり何も変わらないわけだ。 俺は一歩前に出てカゲに手をさしだす。 「お待たせ。帰ろう、カゲ」 やっぱり全員居ないとしっくりこないからね。 |