A級最終戦8 弧月で風間くんのスコーピオンを受けて、俺は直ぐにその場を飛び退いて歌川くんの攻撃を避ける。 そこに乱入者が。 「う、え…最悪」 「つぐみさん、俺も混ざてくれよ」 「…太刀川くん」 予想よりもはやい到着に俺は顔を顰める。 河川敷を選んだのは、こういった事になった場合に、太刀川くんの到着を遅らせる為だ。立地関係が離れたマップを選んだのだが、あんまり意味なかったな。 ヒワちゃんの方に行かれるよりよかったけどさぁ。 「これは、流石に、無理、すぎ!」 太刀川くんから逃げるように退けば、風間くんが追い打ちをかけてくる。 俺が弧月で防ぐと、後ろから歌川くんが斬りかかる。 それをくぐいがノルンで防ぐ。 「くぐい、ノルン、右は捨てるから、後ろと左に集中して」 『了解、檻出しますか?』 「いや、無理。多分入れられないし、ここ狭すぎ」 右手に下がれば、太刀川くんが斬りかかってくる。 俺はそれを弧月で受け止める。 一撃が重い、俺はそれを刃で流して、また下がる。 「くっそ」 圧倒的不利。 というか風間くんたちも太刀川くんも完全に俺狙いだ。 流石に、アタッカー1位と2位を相手にして凌ぎきる自信は無い。 「まじで厳しいぞ、ヒワちゃん…!」 *** 歌川は太刀川の打撃を受けてなお堪えるつぐみを見て感心する。 見えている太刀川はともかく、見えていない風間や歌川のことへもしっかり意識を持っていて、そう簡単には切り崩せない。 『つぐみさん粘りますね』 『嗚呼、この状況下で凄い人だ』 『太刀川さんと風間さんを相手にするだけでもすごいのに、カメレオンも凌いでいるなんて…』 歌川達が知らないだけで、この人は結構な場数を踏んでいるのだろう。 風間が前から警戒しており、当たるとなった時に渋い顔をした意味が分かった。 歌川はスコーピオンを握り直し気を引き締め直す。 ここで1点取らなければ風間隊が無得点になる可能性がある。 『歌川、前に出すぎるな。太刀川に斬られるぞ』 『はい』 風間のアドバイスに従って一歩下がりながら、歌川はつぐみの動きから目を逸らさなかった。 |