A級最終戦5












風間くんのスコーピンを飛びのいて避ける。
手を緩めることなく続けざまに切り込んでくるので弧月で受け止めてはじき返した。
無駄のない動きに俺は肝を冷やす。

「あっぶな」
「本当にそう思っているんですか」

手厳しいお言葉に俺は苦笑いを浮かべる。
なんか当たりが強い気がする。俺、風間くんに何かしたかな。全然心当たりないんだけど。
弧月を握った方の手で、ウォーミングアップするようにぶんと素振りする。

「やだなー、もう俺も若くないし動きについていくだけで精一杯だよ」
「……どうだか」

全く納得していない顔でそう返して、風間くんは姿を消した。
俺は弧月を構える。

「カメレオン、か」
『視覚支援いれるね』
「よろしく」

カメレオンができた当初は「やべぇ忍者!めっちゃ忍者!」「ジャパニーズ忍者!」「やべぇ!テンション上がってきた!」と冬島さんとはしゃいでいたけれど、いざ自分が戦うとなると怖い。
見ないところからの攻撃ってのは未知の話だから。
なんだったら幽霊だからね。

弟くんが視覚支援をいれてくれたので、大体の位置は分かる。

「あとは、角度」

こういうときシューターの練習もしておけばよかったと思う。
だってほら、上から降らせればまぁ大体当たりそうだし。
多分そんな簡単な話じゃないんだろうけれど、少なくともこんなにびびらなくてもいいと思う。
俺は大きく深呼吸する。
弧月を両手で握って目を閉じる。

「だいじょうぶ。できるよね、先生」

俺の両親が死んだあと、少しの間だけ俺の面倒を見てくれた人がいた。
その人のおかげで俺は今生きている。
その時に、教わったことを、思い出せば大丈夫。

「……」
「っ」

弧月で防ぐ。
何も見えないけれど、確かにスコーピオンを受けた感触があった。
直ぐに風間くんが距離をとって離れたのがわかった。
向こうはかなり不思議に思っているだろう。

『たいちょー凄すぎわろた。人外かよ、きもい、変態』
「それ褒めてんの!?」
『うん』
「ちっとも嬉しくない…」

緊張感のない感想にがくっと肩の力がぬける。
そりゃ確かに見えないのを相手にするのは難しいけどね。
カメレオンは、視界から消えるだけで、存在が消えるわけじゃない。
足音も呼吸もなくなるわけではない。
ほら、視界にとらえなくても、扉から誰かが入ってきそうな気配って感じるときあるでしょう?
そういう風に存在さえ感じられれば、後は本人の普段の思考を考慮に入れることで、ある程度動きは読める。
反撃しろって言われると難しいけれど、元々俺の目的は足止めで、こうやって風間くんの気さえ引いていれば、反撃はせずともオッケーなわけだし。
無駄に気を使うから疲れるけど。

風間くんをそうやってなんとか凌いでいると、不穏な通信が入った。
え、出水くんが?え、歌川くんが?

『たいちょー、聞こえてる?出水と歌川がそっちいったよ』
「いや、無理。マジ無理。風間くんで手一杯だから」

カメレオン×2+シュータ=無理。
絶望的に死ねる。
鴇崎くんがお仕事してくれたからあと1点でいいのに、この1点が遠すぎる。
一瞬俺が怯んだすきに、風間くんが立て続けに切りかかってくる。
鎌鼬かよ。

「ひー、こわ……」

俺は弧月で受け止めつつ、距離を取るように後ろに下がる。
きらりと横目に何かが光ったのが見えた。
ノルンが起動して俺の左手に展開される。

『左、出水!』
「っ、やっぱりギムレット…!」

しかし残念ながら、俺には容赦ない出水くんが放ったギムレットの弾は防げず、ノルンが粉砕する。
もっと丈夫に作ることに専念しておけばよかったが、後の祭りだ。
前からは風間くんが俺に追い打ちをかけてくるのでそれを弧月で防ぐのに精いっぱいで避けられない。
やばい、二人に狙われてる。
俺が焦っていると、出水くんのギムレットの弾と、俺の間に、隊章が浮かんだ。ワープだ。

「っ」
「つぐみさん…!」
「鴇崎くん!?」

鴇崎くんが俺を庇ってギムレットの弾にあたる。
出水くんの目が、大きく開く。
驚く俺に、鴇崎くんは笑いかけてベイルアウトした。






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