A級最終戦4










出水は唯我がいなくなったことで余計なものがなくなり、いつもなら喜んだところだが。
今日は手放しに喜べない。

「くっそ……」
『鴇崎さんが今日もイケメンで戦いづらいな』
「副音声するのやめてもらっていいですか!?」

国近の言う通りだ。
鴇崎を狙うのは気が引けた。いつもなら私情を挟むことはないし、ランク戦となればハチの巣にしているところだが。
鴇崎だけは狙える気がしない。向こうが撃つ気でもこちらは撃てない。
つぐみとくぐいを庇って最後まで戦わなかった当真を笑えないが、しかし、あそこまで徹底的に力になることもできない。
個人感情的に複雑な鴇崎はさておき、歌川と菊地原を狙おうとしているのだが。

「見えないってのは厄介だな…」

国近のアシストがあっても上下の角度が分からないので不用意にねらえない。もし避けられた場合に、左右どちらに向かったかもわからない状態で攻撃されたら、こちらも避けようがないからだ。
それは、恐らく鴇崎も同じだろう。と、思ったが。

「えっ」

鴇崎がまたトマホークを降らせた。
その先には出水には何も無いように見えたが、弾が破裂して的中しているのがわかる。
そしてカメレオンがとけた菊地原が現れて悔しそうな顔でベイルアウトした。

「なん、で」

唖然とする出水に鴇崎が振り返る。
いつもと変わらない表情で淡々と告げる。

「最初にね、風間さんを探すのと同時に、スタアメーカーつけさせてもらったんだ」
「こっわ……」

出水が到着する前に風間と混戦し、風間をワープさせたのは知っているが、まさかそのどさくさに紛れて菊地原にスタアメーカーをつけていたとは。
どんだけ器用なんだよ。
凄過ぎて普通に怖い。
出水は一歩下がる。

『やりづらいなら唯我いないし好きにしていいって太刀川さんが』
「そうさせてもらいます!」

太刀川は私情に流されてヒワと戦っているので、出水も私情に流されて鴇崎とは戦わないことにした。
路地に入りすぐにバックワームを起動させ、出水はその場から撤退した。






***





出水が路地に消えた。
何か策があるのかと様子をうかがったがそういうわけではないようだ。

『出水が移動し始めた。たいちょーの方向に向かってる』
「それは困ったね…」

つぐみには風間を任せている。
出水もそちらにいくとなると大分戦況が傾いてしまう。

「歌川くんは?」
『…下がったみたい。こっちも風間さんと合流しようとしてるみたい』
「分かった」

どちらも風間とつぐみの方へ向かっているようなので鴇崎も動くことにした。
3点手にいれるためにあと一人、誰か取る必要がある。
こちらの戦力から言って、まず太刀川と風間は無理だろうとつぐみは言っていた。
なのであと狙えるのは出水と歌川となる。

『たいちょー、聞こえてる?出水と歌川がそっちいったよ』
『いや、無理。マジ無理。風間くんで手一杯だから』
『踏ん張れ』
『歌川くんには遠距離攻撃ないけど出水くんはできちゃうよ!?弾が来られたら無理だって!ノルンにそんなに強度ないって知ってるでしょ!?』

つぐみの言う通りノルンは鉄壁の防御ではない。
出水からギムレットを飛ばされれば貫通してしまう。
例え避けられても、避けているすきに風間に狙われる。
これは流石のつぐみでも辛いだろう。
絶対無理と嘆くつぐみに、鴇崎は足をはやめる。

「すぐに向かいます」





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