A級最終戦3











出水がその場にかけつけると既に風間隊の歌川と菊地原がいた。
おまけに、涼しい顔でこちらを見るその人に、出水は戦いづらいなと内心ため息をついた。

「げ………鴇崎さんまでいるし……」
「出水先輩!助けてください〜!」
「うっせばか!こっちくんな!」
「酷い!」

泣きついてくる唯我を罵倒しつつも一応かばう。
太刀川に唯我のサポートをしろと言われたが、このメンバー相手に生き残らせる方が難しい。
唯我は菊地原達を気にしているようだが、このメンバーの中で一番危険な人間は出水にはわかっている。

「……鴇崎さんは、無理だ。風間さんの指示通り唯我を狙うぞ」
「なんなのあれ、本当にムカつく」

歌川と菊地原もそれには気が付いているため、相手にしない様子だ。
それが一番賢明だろう。
アタッカーだと鴇崎相手はより不利なのだ。
唯我が息をのむ。

「出水先輩、アレは…」
「鴇崎さんのアステロイド」
「え、だって…浮遊して…?」

鴇崎はトリオンキューブだしてそれを星形に分解する。
正直アレすら小難しい芸当で、二宮さんのを真似てみたと言っていたが、ちょっとやそっとのことでできるような事じゃない。
そしてそれはアステロイドとなり、鴇崎の周りを浮遊する。
やっぱりやってきたか。

「超低速浮遊。触ると爆発するから近接攻撃してきたやつを吹き飛ばすんだよ」
「え!えええ…出水先輩もできるんですか!?」
「できるわけねーだろ!…弾は早く飛ばすことは容易いが、遅く動かすこと、まして浮遊維持が一番難しいだよ」

あんなことができるのは鴇崎ぐらいなもんだ。
出水も真似てやってみたが、浮遊時間を継続させるのは相当な神経を使うし、ましてさっさとやってしまいタイプの出水には気の長さが足りなかった。

「でもあれがある限りほかの攻撃は」
「できるからやってんに決まってんだろ」

出水は浮遊維持に気を使ってしまい到底それ以外のことは無理だったが、やたら器用な鴇崎はあれを維持しながら別のこともしてくる。
トリオンの使いに関しては二宮に次ぐと言っても過言ではない。

「唯我、あの人は弱いから出なかったわけじゃない、すごい強いんだ」

いつもオペレーター席にいるし、あまり戦闘している姿をみせないせいで、顔だけとかなんやかんや言われているのを耳にするが、そのたびに出水は腹が立つ。
あの人はもっとすごい人だ。嫉妬するぐらいに、才能がある。
何も知らない唯我の顔に驚愕がうかぶ。

「……え!!!」
「なんてったって、二宮さんの弟子だしな…!くるぞ!」

そう、あの二宮が、彼がC級のときからずっと指導しているのだ。
本当は隊に引き入れるつもりだったところを横からつぐみがさらったらしい。あの時は二宮が数日不機嫌で、出水はしばらく二宮に近づくのを辞めた。今もこの話題になると不機嫌になるのでタブーだ。





***




菊地原は大層不機嫌だった。
何一つ計画通りにいかない。
ついこの間までB級だった人達相手になぜ手古摺らないといけないのか。
いや、本当はわかっている、あの人達の実力ぐらい。

「出水先輩と鴇崎さんのバイパー…厄介だな」
「鴇崎さん本当にムカつく、出水先輩の弾に混ぜてこっちのこと牽制してくるし」

二人のバイパーが飛び交いアタッカーの菊地原達には不利だ。
おまけに鴇崎のバイパーは時々菊地原達にも向けられており、一方ではない攻撃に中々唯我に近づけない。

「中距離三人は厳しいぞ」
「唯我は勘定にいれなくていいよ、どうせ弱いし」

一応唯我もガンナーだが、B級下位の実力すら危ういので勘定に入らない。
ただ、シューターとして実力者である出水と鴇崎を相手にするのはかなり厳しい。
鴇崎の様子をうかがう。
どうやらバイパーの軌道を引くために、浮遊するアステロイドの数を減らしているようだ。
間をぬえば、近づけるかもしれない。

「俺が鴇崎さんの気を一瞬逸らすから、歌川は唯我とってきてよ」
「…分かった」

鴇崎が出水へと集中し、新たなトリオンキューブを出したところで、菊地原は動いた。
カメレオンで姿を消し、近づく。
歌川も同じくカメレオンで姿を消す。
出水が姿を消した二人に顔を歪めるところを、鴇崎が狙う。
その隙をついて、菊地原はスコーピオンをふるった。

「っ」

しかし、刃が鴇崎に届く前にはじかれる。
突然現れたのは、結城隊の隊章。
ガード機能、ノルン。
オペレーター席のくぐいが出現させたのだろう。
しまった、釣られた、そう思った。
気をうかがっていた鴇崎が星を降らせた。

「ぐっ…しまったトマホーク!」
「ひっ」
「唯我!」

トマホークの雨だ。
出水は展開したシールドで、歌川も被弾したようだが辛うじてシールドが間に合ったようだ。
しかし集中的に狙われたのは唯我で。
とっさの事に何もできず、唯我はそのままベイルアウトした。







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