A級初戦6








俺はぼんやり空を見上げる。
暇だ、はやくベイルアウトしたい。

ちらりと工場を見る。
工場地帯を選択したので至る所が黒かったり錆び付いていたりして、独特の寂寞感のせいで、何かゾンビとか出てきそうで怖い。
最近、弟くんのゲームに付き合っていたら、廃工場でゾンビを殺しまくるはめにあい、こういう場所を見るとゾンビが出てくるんじゃないかと思ってしまう。
別に工場地帯じゃなくてもどこでもよかったのだが、当真くんも弟くんもフリーで動けそうなところを考えたらここになった。

『撃ってきますかね?』
「うーん」

鴇崎くんが話しかけてくれたおかげでおどおどせずにいられる。
鴇崎くんの声、落ち着いているからずっと話していてほしい。顔もイケメンで声もイケメンって本当に鴇崎くんはすごいな。

「撃ってこないと困るなー」
『少し逸らして撃ってきそうですね』
「ああ、確かに」

俺はバックワームをつけていないのでここにいることは当真くんも分かりきっているだろう。
さっさと撃ってほしい。たまった仕事がやばいので、はやくやりに行きたい。

「ところで今日ヒワちゃんの所行くんだよね?」
『はい』
「じゃあ冷蔵庫の中にお菓子入れてあるから一緒に持って行ってくれる?」
『承知しました』
「ヒワちゃん今日出られないのめちゃめちゃ凹んでたからなー」
『つぐみさんのお菓子大好きですから喜びますよ』
「本当は昨日渡そうと思ったんだけどね……鴇崎くんたちの分もあるから持って行ってね」
『ありがとうございます』

昨日の夜、ヒワちゃんが倒れた時は俺の心臓の方が止まるかと思った。
心配で結局一晩病院で過ごしたけど、朝には呼吸器も外してもらえていて安心した。
もうあんな思いはしたくないなぁ。誰も失いたくない。
真っ白い顔で横たわるヒワちゃんの姿に過去が重なる。
俺が暗い気持ちになっていると、向かいの建物できらりと光った。

「お、きたか」

漸く向こうが動いてくれた。
膠着状態を維持されるとタイムアップを待たないといけなくなってしまうからね。
しかしまさか目の前の建物にいるとはなー。

『くぐいが撃ちました』
「よしよし」

弟くんが狙撃したらしい。
これで当初の目的は果たしたわけだが、当真くんからの弾道が少し横な気がする。

「これじゃギリギリ当たらない…」

鴇崎くんの言う通り少しずらしてきているようで。
本当に、当真くんらしいというか。

俺は笑って自ら弾に当たりに行く。
当真くんが俺を撃って1点とったら、くぐいも撃っていいとしているので、ここで当真くんにはとってもらわないと困る。

何故なら、くぐいの弾は、外れないからだ。




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