A級初戦5







カゲをとれて大分満足した。
俺はイーグレットを抱いてその場でごろごろ寝転がる。
撃った時のカゲのあの悔しそうな顔。最高にいいもの見た。

『北添くん、当真くんにとられたよ』
「おー…まぁ仕方ないか」

見てない内に北添をとられたらしい。
けどまぁ色々あったし1点くらいあげてもいい。

『上からだねー。結構助けられたのに』
「あれどういうこと?意味分かんないんだけど」
『弟くんがいて助かったよねー、鴇崎くん』
『本当ですね』
「分かってないの俺だけ!?」

俺以外の人は何で当真がうちの隊を助けたのか分かっているようだ。
たいちょーが大好きだから?当真はたいちょーが大好きだからなのか?
俺が分かんないと喚いても完全スルーされた。いじめは良くないと思います。

『さて、この後が問題だ。残るは弟くんと俺と当真くんだけど』
『助けてもらいましたし、タイムアップ待ちでも良いかもしれませんね』
「えー…それはそれ、これはこれじゃない?」
『わぁ、報われないな、とーまくん』
『弟ながらに申し訳ないですね…』
「は?なに?どゆこと?」

それはそれ、これはこれ。当真には後で礼だけ言って、今は狙えばいいじゃないかと言ったら二人に溜息を吐かれた。これは酷い。
俺がちょっとむくれながらどういう事かと聞くが二人はやんわり交わしてくる。

もう!なんなの…!



***




スコープを覗いて辺りを窺うが誰もいない。
真木が言うに、つぐみさんはバックワームを付けていないとのことで位置は分かっている。
けれど建物内で立ち止まっているためこちらを狙っている訳ではなさそうだ。

『どう来るかねぇ』
「さーねー?残りは俺らだけだし」

当真はライトニングを下ろす。
恐らく向こうも作戦会議中なのだろう。
くぐいが単独で動くとは考えづらい。

『恩を仇で返してこられたらおっさん泣くぞ』
「くぐいは仇でかえしてくるだろうな」
『18歳こえー……そもそもあいつ分かってんのか?』
「別にいーんだよ、気が付かなくても。俺がやりたくてやったんだし」

当真がくぐいを助ける理由なんて本人以外は分かっているし、恐らく本人以外は予想していただろう。
そういうくぐいの自分に関する事だけは鈍い所が、ついつい構いたくなる。
当真はにやりと笑う。

「結果的にくぐいが俺に銃口向けるならそれはそれで楽しいだろ?」
『お前らの友情どうなってんだ?おっさん全然理解できない』
「ふつーだよ、ふつー」

若者が分からないと嘆く冬島に笑い、当真は先程影浦をとられていたトラップを思い出す。
つぐみは今日はアタッカーとして弧月を握っていたし、くぐいもスナイパーとして入っているのでトラップは無いと思っていた。完全なる不意打ちだ。
サイドエフェクトで不意打ちを読むのが得意な影浦ですら逃れることが出来なかった。

「つかさっきの鳥籠?檻?なんのあれ」
『趣味悪ぃよなぁ』
「どういう仕掛けよ?」
『さて、なぁ……最近さらに頭の回転が速いからなぁ。俺にもあいつの技術、謎な時あるし』
「まじかよ。すげーなつぐみさん」

何もない空間から人一人入れるだけのサイズの鳥籠を出すのは到底無理なはずだが。それを出して見せた。
あの、まるで防戦だったときの動きに何かトラップを仕掛けていたのだろうか。
だとしたら、そもそも影浦を全力で凌いでいた訳ではなく、遊んでいたということか。
美人には棘があるというが、恐ろしいもんだ。より好きになったなと当真は愉快な気持ちになった。
真木からつぐみが移動をしていると通信が入った。

「おっと…噂をすればつぐみさん…」

ライトニングを構えれば、開けた場所でぽつんと立ってるつぐみ。
何かを狙っている様子も無く、弧月もしまっており手ぶらだ。

恐らく、つぐみの隊を庇った事への感謝で一点渡すつもりだ。
つぐみがベイルアウトすれば必然的にくぐいはソロになるが、当真のいる建物は外の建物より圧倒的に離れておりかつ立地の関係で他者からの射線は通らない。くぐいが狙うのはまず無理だ。タイムアップを狙うのか。
つぐみは義理がたいと言うより、貸しを作るのが嫌なのだろう。一点譲ってチャラにするつもりのようだ。

「だーれが、狙うかよ」

しかし当真はそもそもこれは貸しとは思っていない。あくまで当真が勝手にしたことだ。
つぐみから一点をとるつもりはない。
ライトニングを構えてつぐみをスコープ越しに見る。
相変わらず当真好みの顔だ。
傷つけるわけがなく、少し逸らして頬の真横めがけて弾を撃った。

これで、当真が撃つ気が無い事が向こうにも分かっただろう。





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