A級初戦4










スコープの先には、屋上でライトニングを構える絵馬の姿。
予定は狂ったが当初の目的は果たせた。
たいちょーが炙り出すのはカゲや北添ではない、絵馬だ。

「絶好ポイント」
『良い場所だった?』
「丸見えだね。サンキュー」

狙撃箇所は兄が事前に予測しておいてくれたので後はそこから顔を出すのを待つだけだったわけで。
たいちょーを狙った弾は何故か当真が相殺した。
意味わからんけど味方してくれるならいいかって感じで。
俺は絵馬を撃った。
たいちょー特製のサイレンサーがついているので、接近されるまで気が付けない。
絵馬が消えたら、あとははやいな。
ベイルアウトを確認して、俺は再度イーグレットを構えなおす。
北添に狙われないように普通は移動するけれど、何故か当真が助けてくれているので、多分狙われても助けてくれるでしょ。




***





絵馬がベイルアウトしたのを仁礼からの連絡で知り、影浦は顔を歪める、
こちらのペースだったのを完全に奪われた。
全部あいつのせいだ。

「チッ」

舌打ちすればつぐみは苦笑いを浮かべる。
つぐみも当真がまさか始終結城隊をアシストするとは思っていなかったのだろう。
こんなこと異例だ。
絵馬がとられたからには、ここで一点とっておいたほうがいいだろう。
影浦は周りを宛てにするより力で押した方が良いと判断しスコーピオンを振るう。
切りかかったところでつぐみは飛びのく。
それを追撃しようとしたところで、違和感を感じた。
じりじりと何かが肌を焼く。
嫌な予感がして影浦は飛びのこうとしたが、一歩遅い。

「っ!?」
「よっしゃ成功」

突然空中から籠が落ちてきた。
避ける暇もなく、影浦はその籠に閉じ込められる。
黒い、鉄のような籠は、細やかな装飾が施されていて、まるで鳥籠だ。
スコーピオンで切りかかるが、傷一つつかない。

「なんだ、これ…!」
「ゆーまくんのトリガーに鎖っていう機能があってね、拘束とかに使えるいい能力だなって思ったから真似て作ってみた」

影浦が喉を鳴らして唸る。
こんな檻のようなものにいれられて気分が良いはずがない。
悪趣味なトラップに影浦が不愉快さを隠さないでいると、つぐみは困ったように頭の後ろに手を回した。

「『Zwinger』って名前はくぐいがつけたんだけど…なんか悪いことしてる気になるなぁ」

ちらりとこちらを見て、そしてつぐみは背を向けてしまう。
もう影浦がここから出ることがないと確信している。

「くっそ…!」

数の上でも実力も、この状況下なら影浦の隊が突出しているはずなのに。
当真のクソ野郎。
内心舌打ちをしたところで、視界できらりと光るものがあった。
くぐいの狙撃だ。
結局つぐみはくぐいに影浦を取らせるために動いていた。
つぐみの動きが防戦一方に見えたのも、釣りか。
踊らされたことに苛立ちながら、影浦はベイルアウトした。







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