A級初戦3








くぐいが視界から消える。
影浦はそれを確認し舌打ちをした。

「チッ、逃がしたか…」
「捕られちゃ困るからね」

片手で弧月を構えるつぐみの姿に口角を上げる。
これはこれで、面白い。
いつもコソコソと裏で糸を引いている男が目の前にいる。
影浦はスコーピオンを振りかぶった。

「まぁでも…悪くねぇよ!」
「そりゃ!」

壁を蹴って上から切りかかると、つぐみは弧月でそれを受けた。
力を込めて押すと、つぐみは口元の笑みを深めて、弧月で影浦をはじき返す。

「どーも!」

無理に押せば耐久度で劣るスコーピオンでは不利だ。
影浦は空中で回転して膝を曲げて着地の衝撃を和らげる。
つぐみは逃げる気はないようでその場に立っていた。
改めて対面するつぐみを無遠慮にじろじろと見る。
隊服姿になっているところを、影浦は久しぶりに見た。
正装のように襟のついた隊服に身を包む様は、普段と雰囲気が違って隊長としての貫禄がある。
これが本来の結城隊。
昔憧れた強さだ。
影浦はサイドエフェクトで感じ取ったざわざわとした感情に顔をしかめる。

「なんか企んでんな」
「さー、どうだろう?」

問うても答える気はないようだ。
もともと返事は期待していないが。
そんな簡単に崩せる相手じゃないと分かりつつも、影浦は少し距離を取る。北添がメテオラを放つらしい。
仁礼のオペレーター室からの助言に余計なことをと思いつつも従った。
しかし、完全に不意打ちのはずだが、どうやら読まれていたようで、つぐみは北添のメテオラが放たれる報告をちらりと確認した。
向こうのオペレーターであるくぐいの兄はかなり強敵だ。
先につぐみを落としておこうと、北添のメテオラをよける隙を狙おうとしたが。

「お、…お?」
「チッ…当真の野郎…!」

つぐみも驚いたように目を瞬かせる。
影浦は舌打ちした。
当真がまた北添のメテオラをライトニングで相殺し結城隊を守った。
馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、こんなときまで大馬鹿だ。どんだけ好きなんだよクソ野郎と内心罵りながら、影浦は地を蹴った。

「驚いたな…、まさか俺まで守ってくれるなんて」
「守るだろうよ!あんたはお気に入りだからな!」
「っぶな」

どうやら自分が守られることは計算にいれていなかったようだ。
周囲からすれば納得いくというか、むしろくぐいを守るのであればつぐみも守るだろう。当真はそういう男だ。
影浦のスコーピオンを弧月で防ぐ。片足を軸に回し蹴りをしかけると、つぐみはそれを片腕で受ける。弧月を握る腕の力が弱まった。影浦はにやりと笑ってスコーピオンを一度引いて再度振り下ろす。
つぐみは直ぐに冷静に判断し、身を引いた。飛び退いて、着地先は、狙撃には丁度いい開けた場所で。

『つぐみさん絵馬くんの狙撃!』
「おっと…?」

つぐみが顔をしかめる。
割と近くに絵馬はいたようで、狙撃の弾がかなり迫っていた。影浦に誘導されたせいで自ら近づいてしまったせいでもあるが。
しかしここでまた影浦隊は攻撃を邪魔された。
光のようにはやいライトニングが絵馬のイーグレットを相殺する。

「当真くんすごいな…」

燃えて消えた弾に感心するつぐみとは対照的に影浦は顔を顰めた。
これでは影浦隊VS結城隊&冬島隊だ。
当真のやつ後でシメると毒づき、影浦は目の前の餌を逃がすまいと再度地を蹴った。







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