A級初戦2










衝撃を覚悟して受け身を取ろうとすると、カゲと俺の間に人影が現れた。
カゲのスコーピオンを弧月で受け止める。

「くぐい!」
「たいちょ…!」

カゲを弧月で弾き飛ばしたたいちょーはざっと地を蹴って俺を背にかばう。
どうやら分かっていたらしいカゲは顔を歪める。
そんなに俺がとりたかったのか、俺もカゲを取りたいけれど。

「…チッ」
「そんな簡単にとられちゃ困るんだよ、影浦くん」
「おもしれえ…!」

余裕の笑みで弧月を構えたたいちょーの姿にカゲの口角が上がった。
たいちょーが前線で弧月を構える姿を見るのは久しぶりだ。
いつも居ないか、いてもトラッパーに専念している。
だからカゲも喜んだのだろう。

「くぐい下がりなさい」
「うん」

この場をたいちょーに任せて俺は建物内に隠れようと足を踏み出す。
カゲと位置が近いのは不利だ。
サイドエフェクトがある限り、接近でのカゲへの不意打ちは難しい。
俺がたいちょーから離れて数歩歩いたところで焦った声が聞こえる。

『くぐい!北添くんのメテオラ!』
「っ」
「げ!」

たいちょーの焦る声が重なる。
カゲの相手をしているたいちょーはこちらに来ることができない。
北添のやついつも適当メテオラのくせに、今日に限って正確に撃ってきている。
くそ、どういつもこいつも遠慮がないな。
俺が腕の一本覚悟したところで、北添のメテオラは狙撃によって相殺された。

「え……」

狙撃の方角を見れば、スナイパーが隠れられそうな建物は随分遠くにあった。
あれだけ遠ければ弾をあてられる人間は限られてくるし、そもそも北添の砲撃を、同じチームの絵馬が邪魔するはずがない。

「チッ、当真か」

カゲの言う通りだ。
この場にあといないのは、とーまぐらいで。
とーまが俺を、助けた。
一瞬動きを止めた俺にたいちょーが「くぐい!」と俺を呼ぶ。

「う、うん!」

直ぐに冷静になって俺は足を動かした。



* * *



イーグレットのスコープを覗いて、くぐいがその場を離れたことをしっかりと見届ける。

「傷つけさせるかよ」

当真は口の端を上げて、楽しそうに笑う。
そして銃先を変えて、つぐみとカゲの動きをうかがう。
つぐみは、カゲのスコーピオンに完全に受け身の体制だ。
耳元の通信機から冬島の声が聞こえた。

『当真、よかったのかー?』
「俺のお気に入りの隊が頑張ってるのよ?傷つけさせるわけないだろ」
『ひゅー格好良いねぇ』
「俺は常に美人の味方だからな」

通常トラッパーはオペレーター室で専用端末を使ってアシストする。
冬島も現在オペレーター室で真木と共に当真のアシストをしていた。つぐみは例外だ、あの人は弧月も使えるので前線に出ている。
そして今回は、くぐいに当真達を取らせるためにつぐみは囮をかってでている。
あのチームの攻撃の要は誰が見てもヒワで、でもそのヒワがいなくても、くぐいを前に出した。
当真は笑みを深める。そういうところがいい。
おそらく、つぐみは分かっていたのだ。当真がくぐいを手助けすると。

イーグレットを構える。

「つぐみさんの賭け、乗ってやるさ」








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