B級戦5







何を考えているか分からない。

村上はヒワの攻撃をシールドで防ぎながらこの後の展開を読もうとしていた。
ヒワは村上を仕留められる間合いにいるものの仕掛けてはこない。
口元に笑みを浮かべているあたり、余裕といった雰囲気だ。
通信機から今の問いかけが聞こえる。

『どう思う?』
『分からないな…』
『くぐいくんが鋼を狙っているのは確かだろうけど…』

来馬が村上を援護しながら首をかしげる。
ヒワはちらりと来馬を見たが、手を出すつもりはないようだった。
小荒井がこちらの状況をうかがいながらじりじりと距離をあけている。
村上はそちらを見て、ふうと息をついた。

『小荒井を生かす理由はどうでしょう?』
『東さんにフリーで動かれると困る。…だけじゃないわね、きっと』
『タイムアップを狙うような人達じゃないよ。特に、A級3位を狙うなら得点が欲しいはずだ』

小荒井は引きたいところだろうけれど動けずにいた。
ヒワも決して小荒井をかばっているわけではなさそうで、時折弧月をそちらに向けている。
村上とヒワの意識が小荒井に向いており、小荒井もその場を下がれば切られることはわかっているようで背は見せない。

『でも、誰から落とす気だ…?』

来馬の疑問に村上の心境も重なる。
このままでは膠着状態だ。
くぐいはこの瞬間も村上を狙っているのだろう。
村上は周囲の建物を見やる。しかしその姿を視界にいれることはできなかった。
そんな簡単に見つかるような場所に陣取るわけがない、くぐいがスナイパーとしての能力が高いことは、アタッカーの村上でも分かっていた。
脳裏に浮かぶのはいつもぶかぶかなパーカーを着た、小柄な姿だ。
こんな最中だというのに、なんとなく、普通に会いたくなってきてしまった。

「村上」
「っ」
「考え事してると、切るぞー」

村上の意識が上の空になったことに気が付いたヒワが何か勘ぐったのかにやにやと笑うので、誤魔化すように村上は咳払いをした。

「貴方は、俺を切らないですよね」
「ん?」
「違う、切れないんだ。くぐいがいるから」

村上はヒワの表情をうかがう。
ヒワは話を聞きながらも手をとめない。
村上は弧月を左に避ける。

「さっき東さんに穂刈を取られたから、くぐいは気がたっているはずだ。だから俺まで他に取らせないようにしている。違いますか?」
「……じゃあこの後はどういう展開だろう?」

含みのあるヒワの言葉に村上は眉を顰めた。
何を言いたのかと村上が疑問に思ったところで、ヒワはちらりと奥を見た。

「―――浮いた弾は獲りやすい」
「……!」

その視線の先を見て、村上は息をのんだ。
来馬との距離が、離れすぎている。
今からの通信が入った。

『来馬先輩、狙撃!』
「ひっ」

その言葉に空を見れば、確かに光が見えた。
今からかばったところで間に合わない。
おまけにヒワが突然小荒井の方へ体を向けた。
小荒井を取られる。

「しまっ…くそ」

来馬がベイルアウトしたのを眼の端に入れながら、村上もヒワをおった。
ヒワの一撃を凌いだ小荒井へ、村上は慈悲なく弧月をふるった。
村上を防げなかった小荒井はベイウアウトし、村上はすぐにヒワへと向き直り警戒した。

そこでもう一度狙撃があった。
空を見上げれば、来馬を狙った最初の狙撃とは位置が違う。
そして狙いはこちらではなく、通常であれば狙うことができない斜面上へと弾はのぼり、そして大きく軌道を膨らませる動きを見せて対象を射止めてみせた。
今からの通信でベイルアウトした存在の名前を知る。

「東さんがベイルアウト…」







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