B級戦4








たいちょーの夜鷹が消えて動揺する。
こんな展開は予想していなかった。
そもそもB級戦で誰かがベイルアウトするなんて考えてもいなかった。
たいちょーから最後の通信が入る。

『くぐい、荒船くんを撃ちなさい』
「っ、分かってるよ!」

迷ったら荒船に逃げられる。
俺はアイビスから持ち替えたイーグレットの引き金を引いた。
その弾は真っ直ぐに荒船の頭に飛んでいった。
ヘッドショットが決まり荒船をベイルアウトさせる。
ヒワさんも荒船がベイルアウトしたことで、東さんを警戒してその場から直ぐに建物の影へと姿を消した。
たいちょーのアシストが無くなったので、俺も直ぐにその建物から飛び降りる。ワープ出来なので自力で動くしかなかった。俺までベイルアウトするわけにはいかない。

「くっそ、これだから東さんは嫌いなんだよ…!」

俺は悪態をついた。
荒船を撃ち取ったのに全く喜べない。
穂刈をとられた、おまけに横取りされた。
これだからスペックの高い男は嫌いなんだ。
苛々しながら俺は次の狙撃ポイントへと向かう。



***



奥の部屋からつぐみさんが姿を現す。
マップ上ではヒワさんもくぐいもバックワームを起動して建物に隠れていて、一先ず東さんからの狙撃からは逃れられたようだ。

「ふぃー、おつかれさん」
「お疲れ様です。すみません、俺のミスです」
『違う、俺が』

俺とヒワさんが直ぐに謝罪を述べる。
くぐいも何も言わないがかなり気にしているだろう。
隊長が欠けたのはかなり精神的に負荷となる。
読みが浅かったし、東さんを気にしてなかったので俺も気が付くのが遅れた。
隊の中で唯一対応できたのはつぐみさんだけだった。

「はいはい、切り替えなさい。まだ戦闘中でしょ」

けれどつぐみさんは俺とヒワさんを制した。
マップにうつる影を確認して冷静に判断してる。
この人は、東さんの動きを読んでいただけでは無く、次の動きも想定しているのだ。

「新しい指示出すよ」
「はい」
『はい』

いつも不在がちでよその隊からは頼りない人だと思われる事も多いが、俺たちにとって、隊長としての役割をきちんと果たしている、隊長として申し分ない人だ。
だから癖が強い皆が付いてくるのだろう。
つぐみさんは負ける気は到底ないらしく口元に笑みを浮かべている。

「ヒワちゃんは村上くん達の方に向かいなさい」



***



勝負は一瞬だ。
東が荒船達の方角を二度狙ったと聞いて、村上は直ぐに行動した。
この状態を覆すには一人おさえておく必要があった。
村上は一気に距離を縮める。

「奥寺!」
「鋼!」

小荒井と来馬の声がした。
村上は咄嗟の事に動けないでいる奥寺の身体を無慈悲に真っ二つに切った。
直ぐにその場を飛び退いて小荒井の追撃を避ける。
奥寺はベイルアウトした。
来馬はさらに距離を詰める小荒井を牽制するため、村上の援護射撃をする。

「鋼、派手に動くと」
「東さんは二度と同じ場所から撃ちました。今は移動中のはずです。だから狙い目です」

何度も同じ場所から撃つとは思えない。
小荒井達の援護ができない今をチャンスにかえて2ポイントとるしかない。
来馬も頷く。

「そうか…!この隙に………」
「っ!」

小荒井も奥寺がベイルアウトして東の援護が受けられない状況は劣勢と判断したのか距離をとりはじめる。
それを村上は追うように一歩踏み出す。
この状況なら小荒井をとるのは難しくない、ソロでの実力差は明らかだ。
しかし、乱入者が現れた。
村上はレイガストで弧月を防ぐ。
相手はにやりと笑った。

「俺も混ぜてくれよ、鋼」
「ヒワさん…!」

庇われる形となった小荒井がその名を呼んだ。
小荒井を庇ったのは東をフリーにさせないためだろう。
もう一点奪うのが難しくなり、村上は間合いを測る為後ろに距離をとる。

「来馬先輩下がってください!」
「あ、ああ…!」

ヒワがいると点が獲りづらい。おまけに、そろそろ東も次の射撃ポイントにうつってるだろう。
再びの劣勢となり、村上は表情を変えないながらも、少し焦りを感じていた。
 





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