当真と悪戯






進行方向の部屋から当真くんが出てくるのが見えた。
向こうもこちらに気が付いて、その長い足であっという間に俺の前にやってくる。

「お、つぐみさん。良いところに」
「会って早々嫌な予感しかしないんだけど当真くん…」

大体冬島隊の二人にいい思い出がない俺だが、今日は何もされてない内から既に嫌な予感がした。
俺が顔をひきつらせるのと対象的に、当真くんは満面の笑みを浮かべている。

「トリックオアトリート」
「言うと思った!」

今日は10月31日で、朝から散々その言葉を言われ続けた。
なので、当真くんが言わないわけがないとは思っていたけれど、予想を見事に的中させてくれた。流石スナイパー…。

「それで?悪戯していい?」
「やめなさい、というかやめてください」

なんで悪戯する前提なの。
俺がさっと眼鏡を押さえて死守すると、当真くんはにやにや笑う。

「ちょーっとその眼鏡とるだけだから」
「これ身体の一部だから。外れないやつだから」
「またまたそんなこと言って」

嘘じゃありません。これくっついてるんです。
この言い回しどこかでもしたなと思いながら、俺は一歩下がる。当真くんがじりっと距離をつめてくる。
完全に獲るつもりだ。力づくで獲るつもりだ。

「それで?覚悟は決まった?」
「決まりませんし!?」

だから何で獲られる前提なの!
俺が身構えると、当真くんが手を伸ばしてくる。
これがいつも眼鏡を獲られるパターン。
ふっと俺は笑った。今日はいつもの俺とは違うぞ。
隙あり、と俺は当真くんの口にそれを放りこむ。

「っ、あ、飴?」
「ハッピーハロウィン、子供は大人しくお菓子もらっておきなさい」
「ふつーに、びびった」

今日散々言われたからね。学習している。
というか出掛けに持って行った方がいいと木崎くんに大量の飴を渡されていて。当真くんの口に入れたのは、その内の一つだ。
素早く封を切って口に入れてしまえばこちらの勝ちだ。
無理やり食べさせたので受け取らないという手を使わせないという、自分でも姑息だなと思う手段。
現に当真くんは不満そうな顔をしながら飴を咥内で転がしている。

「つぐみさんずりぃ………」
「ふふふ」

いつもやられてばっかりなので、一杯食わせる事ができて俺は満足だ。
俺が嬉しそうに笑うと当真くんはちょっと驚いた顔して頭に手を回した。
そして俺につられるようにふっと笑う。

「まぁつぐみさんの嬉しそうな顔が見れたからいいけどな」


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