大規模侵攻2












滑り込むように入った技術室には既に多くの技術者が集っていた。

「遅くなってすいません!」
「壁の修理頼む!」
「はい!」

自席に座れば直ぐに壁のデータが送られてきた。
数値を見る限りは雨取ちゃんに破壊された時より被害は少なそうだ。
雨取ちゃんにより技術部が鍛えられた成果が出たな。
一番被害の大きい、壁のトリオンが薄くなった個所から修正していくことにして、俺は必要なトリオン量を計算していく。
程なくしてPHSが鳴った。
俺は電話を取ってインカムを耳につける。

『結城、聞えるか』
「はい」
『手元を動かしながら聞け』
「はい」

鬼怒田さんからの通信を聞きながら、数値を入力していく。

『諏訪が無事か分からんが、情報だとトリガー使いを捕獲するらしい』

どうやら食堂で聞いた話の続きらしい。
トリガー使いをとらえるトリオン兵という点は興味深いが、敵の解析は冬島さんに任せるとして。

『この段階で分かる事はあるか?』
「……諏訪くんは生きてる可能性の方が高いですね」
『何故だ?』

真っ先に気になるのは被害者の生死だ。
捕獲という情報はあくまでレプリカの言葉で実際にそうとは現在の段階では確定できない。
けれど、今回は正確に『捕獲』で間違いないだろう。

「殺す必要が無いからです。トリオンを奪うだけでいいのであればトリガー使いを狙う必要はありません。トリガー使いになるからと言って、必要以上にトリオンが多い訳じゃないはずです。一般人ではなくトリガー使いをあえて狙っている点から、戦力としてカウントするための捕獲の可能性が高いです。だから、殺すのはまずない」
『そうだ。他には?』
「うーん、そのラービットに、人の形のままで収容する可能性は低いですね。そうなると一人、二人しか捉えられない。一旦格納に戻るなんて非効率的です」
『お前ならどうする?』
「諏訪くんはトリガーを起動していたんですよね?そうしたらトリオンに戻してしまうのがはやい…粒子に戻して丸めたりとかしてるかもしれませんね」

なぜ一般人ではないのか。戦力を探すにしても一般人からでも構わない、でもあえてトリガー使いを狙っているということは、トリオン体で戦っている為粒子にすることが容易いと仮定した方がはやい。かつ、捕獲する上で、人の形では多くはラービットに収まらない。効率の良さを鑑みれば、コンパクトにキュッとした方がベストに決まっている。
俺が捕獲を考えるなら、少なくともそう考える。
鬼怒田さんがふんと鼻を鳴らした。

『どうやら頭はまだ動いているようだな』
「え、試されてました?」
『この後も使えるかどうかの確認にな』
「普通に酷いです」

今日までこき使っておいてさらにこき使う気だな。
こうなったら終わるまでとことん付き合うからな!と謎の気力がわいてきた。
寝不足によるナチュラルハイかもしれない。

『今諏訪がこちらに戻ってくる。戻り次第、壁は他の者に任せてそちらの解析に移れ』
「了解です」
『この後も使うからな、しっかり頭は残しておけ』
「はーい」

俺はエンターキーを強く押す。
はい、計算終わり。





再びPHSが音を鳴らす。
画面も確認せずに電話をとれば予想外の人物からだった。

『つぐみさん』
「うさちゃん?」
『迅さんからの指示で情報共有の連絡です。今大丈夫ですか?』
「了解。どうぞ」

迅くんからの、と聞いて納得した。
俺はうさちゃんの情報に耳を傾けながら手元を動かす。

『修くんは、千佳ちゃんたちC級を援護しながら本部に向かっているみたいです。レイジさん達はそのサポートに向かっているところ。で、迅さんもどうやらそろそろ動く見たいです。西地区を離れたって』
「西を?……そう」

じゃあそう長くはかからず、俺の選択の時が来るんだな。
うさちゃんが不思議そうな声をもらす。

『なんでつぐみさんに情報共有するんですかね?本部から外に出ないはずなのに…』
「…うん、何事も無いと良いね」
『大丈夫ですよね!?危ない目にあったりしないですよね!?』
「だいじょうぶだよー」

多分。頑張るって決めたし。
俺がへらへら笑うと、前の席の先輩が怪訝そうな顔をした。







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