佐鳥のオトモダチ


//ボーダーB級ソロ








俺には友達が少ない。
それを悲しいと思った事は無いし、少ないだけで居ないわけではない。
友達を作れないほどコミュニケーション力がないとかそういうわけではなく、友達が多いと不安になるから作るのが怖いのだ。
そんな俺の唯一の友達。

「しとどー!」
「っと、賢か」

正面から飛びついてくるので転びそうになった。
それを壁に手をついて耐える。
本部でも学校でも、声をかけてくるのは佐鳥賢くらいだ。
偶々入学式で隣同士になり話しかけられて、それ以来よく声をかけられるようになった。
友達を作るのが怖いからと言って別に邪険にしたりしない。
その内飽きるだろうと思って放っておいたらそのまま居付いてくれた感じだ。
賢の背中を撫でて宥める。

「お仕事は?」
「これから行く。だから充電」
「アハハ、なにそれ」

広報の仕事をしている賢は任務以外にも仕事があるので、ゆっくりはしていられないはずだ。
俺と真逆な賢に、いつも不思議な気持ちになる。
俺と違って賢には友達がいっぱいいる。
だから俺なんて構わなくてもいいはずなのに。

「しとどは今日任務?」
「うん、荒船さんのところと合同で」

荒船さんのところはアタッカーがいないのでよく組む。あと当真さんのところとか。
そこそこ困らない程度に接しているが、決して深入りはしないし、してほしくないと事前に告げている。
賢が心配そうに俺を見つめた。

「どっかの隊に入れば良いのに」
「チームプレー苦手なんだって」

正しくは誰かと仲良くするのが苦手だ。
相手に陰口叩かれているかも、不快に思われているかも、そういう不安が尽きない。
それにもっと嫌なのが、自分が嫉妬深いことだ。自分を一番の友人として扱ってくれない事に嫉妬する。そんな欲深すぎる自分が大嫌いだ。
だからいっそ賢のことは割り切れた。
広報の仕事があるんだから皆に良い顔するのは当然。隊の人と仲良くするのは当然。俺を一番に扱わないのは、当然。

「はい、飴ちゃん。頑張れ」

みっともない所は見せたくなくて、賢に飴を渡して引き下がらせる。
賢はまだ何か言いたそうな顔をしていたが、時枝が呼びに来て、結局は行ってしまった。

そういうところが、嫌。

俺はくるりと背を向けて、任務の為に荒船隊の隊室を目指した。




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