当真のクラスメイト8




ソファーに寝そべるカゲを覗き込む。

「カゲー」

サイドエフェクトで俺が近づくことは分かっていたカゲは眠そうな顔で俺を見上げた。
残念ながら俺はカゲが眠そうだからといって気を使うような奴ではない。自分で言っておいてなんだが、最低だ。ともかく用件をすましてしまおう。
俺は手を差し出す。

「トリックオアトリート!悪戯は興味ないからお菓子くれ」
「身も蓋もねーな」

トリックに興味ないから、トリートオアトリートかな。
なにはともあれ、菓子をくれ。
俺はソファーの背凭れに身を乗り出してカゲを見下ろす。

「ねー、お菓子ちょーだい」

カゲは眠そうに欠伸を漏らす。
サメみたいなギザギザの歯が見えた。いつみても不思議な歯だ。

「…俺が持ってると思ってんのか」
「期待してない」
「わかってんじゃねーか」

やっぱり無いのか、北添に聞くべきだったな。
無駄骨になってしまった。
俺は口を尖らせる。

「じゃあ悪戯?」
「返り討ちにすんぞ」
「こわい」

100倍になって仕返しされそうだ。
いっそ別の人間の所にたかりに行った方がはやそう。
俺がソファーの背から降りようとすると、その腕を引っ張られる。

「わっ」

ソファーに引きずられて落ちた先はカゲの上だ。
カゲは全く気にせず、そのまま俺を抱き込む。ソファーに二人で寝ると狭い。

「なに?」
「ねる」

もう完全に目を閉じていてどう考えても俺の意見など聞いていない。
抱き枕から逃げ出せる気もしないので俺はあっさりと諦めた。

「えー…まぁいいけど」

お菓子はまた後で誰かにたかればいいか。
カゲの胸に顔を埋める。

「おやすみ」
「ん」

短い返事が返ってきて、直ぐに規則正しい寝息が聞えてきた。
俺もそれにつられるように、目を閉じた。



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