当真のクラスメイト6












村上は二人が出してきた食材に今日のテーマを思い返す。
それをじっと眺めて首を傾げる。

「いや、プリン作るって話だっただろ」

そう、プリンを作ろうという話になったはずだ。
少なくとも村上はそう聞いていた。
横で荒船が机をたたく。

「なんでこうなった!」




当真としとどが荒船により床に正座させられているのを村上は後ろで苦笑いを浮かべてみていた。
荒船がリビングの机に置かれたものを指さす。

「ふざけんな!当真お前何持ってきてんだよ!」

瓶に入っている黒い液体。パッケージには外国の言葉で何かが書かれていて、十分怪しげだった。
当真は激昂する荒船にまったく動じずけろりと答える。

「イカスミ」

荒船が頭を抱えた。
村上も胃が痛くなった。

「当真、ちなみになんでこれを持ってこようと思った?」
「黒いプリンってあんじゃん?」
「あれはゴマだ!阿呆!」

今日はプリンだったはずだが、なぜイカスミを持ってこようと思ったのか聞いたところ、斜め上の発言が返ってきた。
荒船の突っ込みに、へぇと当真が相槌を打った。
この反応から、分かっていてイカスミを持ってきたのだろう。
荒船は黙って当真の頭を容赦なく殴った。
痛がる当真をよそに、今度はしとどに向き直る。

「次、おい、クソチビ」
「はっ、はい」
「これはなんだ」

いつもは小さいと言われると怒るくせに荒船の怒りに触れたくないらしく黙って受け入れていた。
怒られたくないなら持ってこなければいいのに。
リビングの机に置かれたのは、ジップロックに入れられた、緑の粉。
職務質問でもされたら絶対に何か聞かれるやつだ。
しとどがか細く答える。

「………緑の着色料、です」

しかし返答は実にふわっとしたものだった。
プリンをつくるという話をして、粉の着色料(緑)だけを持ってくる精神がすごい。
当真が聞く。

「その心は?」
「プリンといえば牛乳じゃん?だから牧歌的雰囲気を感じるために緑に」
「せめて抹茶パウダーを買え!」

荒船の正論が虚しく室内に響いた。
その言葉に、ああ!と素で思いついていなかった声を出すしとどに、村上はさらに胃が痛くなった。
そもそもなぜプリンに牧歌的雰囲気を求めたのか。
荒船がしとどの頭を片手でがしっとつかむ。

「お前が手作りプリンを食べたいとか言うから集まってやったのに全然作る気がねーじゃねーかよ」
「いたたたたた!!!作り気あります!!!!やる気だけはあります!!!!」
「じゃあ材料持ってこいって言ってなんでこうなるんだ?ああ?」
「こ、こわいです、あらふねせんせい」

目の据わった荒船にしとどが白旗を上げた。
泣きそうになっているので、村上が助け舟をだしてやる。

「まあまあ荒船。念のために俺が材料を買ってきておいたから大丈夫だ。あの二人の持参物さえ使わなければ」
「おっと村上からの暴言」
「俺ら全否定だぜ」
「お前らまともなもん持ってきてからその口開け」
「うぃっす」

荒船が凄むと、しとどは瞬時に返事をする。
それに笑って村上はキッチンへと向かう。
エプロンをすると、荒船が追って来た。
村上が紺のエプロンを差し出すとそれをして、そして二人に念を押す。

「お前らこっから先絶対くんな」
「これは酷い」

二人に参戦されたら正しい食材を使っても正しい料理になるか怪しいので村上は笑うだけで何も言わなかった。






「あーテレビ見てたら炒飯食いたくなってきたな」
「めっちゃ分かる、プリンとかどうでもよくなってきた」
「お前ら殴り飛ばすぞ」







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