当真のクラスメイト5 荒船の目の前でポテトを齧りながら無い頭を絞って思い出している様子のしとど。 三年も経っていない筈なのにかなり曖昧な様子だ。 「って感じだったような」 「あー…当真は猫が好きだからお前みたいなのは構いたいんだろうな」 「なるほど、どういう意味か全然わからん」 しとどはさっぱり分からないという顔をしていた。相変わらず馬鹿だ。 荒船達は今ファストフード店に来ていた。 特に用事がなくとも同い年同士集まる事は多いが、今日はしとどが新発売のあんこパイが食べたいと言い出したのでこの店集合になった。 なのにこいつといったら着て早々、「メロンジュースとポテトで」とか言い出して。あんこパイは何処に行ったんだよ。 先に訪れたのは荒船としとどだった。 トリガーのメンテナンスで村上と穂刈は本部に寄ってから来ると言う。 当真も任務の為後から合流と言う形になった。 二人と言うのは別に珍しい話しではなく、雑談をしながら待っていたのだが、そういえば一番初めにしとどと知り合いになった当真とはどんな出会い方をしたのかと疑問に思っていたためついでに尋ねたところだった。 普通に生活していればボーダーでもなく決して社交的でも無いしとどは到底当真と知り合いになる要素などなさそうだ。 しかし、当真から話しかけたとなれば別だ。 当真にきっかけを聞いた方がはやかもしれない。 「あ、来た。とーま」 しとどが入口を見ている。 荒船が振り返れば当真もこちらに気がついたのかこちらにゆっくりと歩いてきた。 「お疲れ」 「お疲れちゃーん…ぶわっ、何すんの!?」 「つい」 当真はしとどの隣の空いている椅子に座り、しとどに寄りかかった。 非力なしとどは当然支えられずに、反動で壁に半身をぶつけていた。阿呆だ。 当真はくくっと笑いながら、しとどのポテトに手を伸ばしている。 「俺のを食べるな!自分で買いにいけ!」 「今穂刈と鋼が買ってくれてる」 「それなら待てよぉ…!」 しとどの言葉に荒船も笑う。 正論なのだが、しとどが言うと何故か笑える。 全く懲りていない当真はポテトを勝手に食べながら問いかける。 「何の話してた?」 「荒船先生が俺と当真がどうやって知り合ったか知りたいって言うから、屋上で絡まれた話を」 「絡んでねーよ」 「絡んでるだろ。どう見てもあれは絡んでる」 この場でこの二人を見ていても不良が絡んでいるようにしか見えないので、しとどの主張は正しいだろう。 今は無くなったらしいが昔はよく教師にカツアゲにあっているんじゃないかと心配されていたと穂刈が話していたことがある。 そりゃそうか。この二人の見た目が全て悪い。 方や長身、リーゼント。方やチビ、痩身。どう見てもカツアゲの図だ。 「つか、あの時しとど初対面って言ってたけど、あれ初対面じゃねーからな」 「…え」 どうやら当真は当時の事をよく覚えているようで直ぐに検討がついたようだ。 しかししとどの言っていた事を否定する。 しとどは「え!?」と盛大に驚いた顔をしている。 思い出す様に明後日の方向を見て考えこんでいるがどう見ても思い当たる節が無い様子だ。 「全然思い出せねーって顔してるぞ」 「まぁ、だろうと思ってた」 クエスチョンマークを飛ばす姿に当真はにやにやと笑う。 その当真を見て荒船は漸く納得がいった。 当真が他人に、しとどに興味を持つには少しインパクトにかけると思っていたが、事前に知っていたとあれば話しは変わる。 「どっかで会ってれば、そのリーゼント忘れなさそうだけど」 「人の特徴をそこで捉えんな」 しとどの様子からしとどは知らず、当真が一方的に知っていたのだろう。 しとどと付き合いが一番長いのは当真だが、荒船が知らないことがあるのは少し面白くない。 また二人だけの時間があったことを実感してイライラした。 「ずっと前から一方的に知ってたとか怖い、ストーカーじゃん、ってこらポテトを根こそぎ喰うな!」 「ケチケチすんなよ」 「手足削れろ!いっ…!」 物騒な事を大声で言うしとどに荒船は容赦なくその小さな頭に手刀と落とした。 しとどが痛みに呻いて頭を押さえる。 「うるせぇ店内だ静かにしろ」 「へーい」 「なんで俺だけ…!」 八つ当たり交じりだった自覚はある。 あと、何となく叩きやすい位置にしとどの頭があるのが悪い。 しとどは机に突っ伏す。 「もうやだ、穂刈と村上はやく来て…」 しとどにとっての安息の地はそこの二人なのだろう。 ううっと呻くしとどに荒船と当真は笑う。 「しとど、スマホ光ってんぞ」 「んー?……あ、カゲ来るって。わんちゃんと北添も来るって」 机の上に出しっぱ無しになっているスマホをごそごそと操作してしとどはラインを起動し画面を確認する。 影浦達は本部で訓練があると午後から姿を消していた。 それを誘っていたらしい。 荒船はメンバーの数を確認する。当真も同じことを考えていたようだ。 「席足んねーな。移動するか?」 「隣の机くっつければいいだろ」 今6人分を確保しているが、このままだとあと一つ机を調達する必要がある。 そろそろ混雑しだす時間のため、あまり大人数での長居は気が引けた。 当真が思いついた様な声を出す。 「あ、カゲ達来たらしとどの家行けばよくね?」 「え」 「嗚呼、そうだな」 「うちをそんな簡単にぽんぽん使うの止めてもらっていいですかね!?」 もはや定番の地と化しているしとどの家に異論は無い。 むしろこれからくる影浦の事を考えても此処より居心地が良いだろう。 勝手に決めた事にしとどは文句を言うが、異論は無いようで、スマホで家に連絡を入れていた。 |