16歳組と終わりたい子と作戦会議



「嵐山隊と終わりたい子」のつづき








さしだれた手の多さに人数多すぎだろとちょっと引いた。
いやむしろこんなに居るのであれば俺は必要ないのではないだろうか、帰りたい。

「ぐーちょきぱーでわかれましょ」
「お、いい感じに分かれたな」
「とりまるずるいやつ禁止だからね!」
「分かっている」

楽しそうな佐鳥賢の傍で俺は自分が出した指を見る。チョキ。あそこでドサクサに紛れていっそ出さなければよかったのかもしれない。でもそんなことしたらこの場の空気を悪くするかもしれないし。
ぽつりとつぶやく。

「なんで俺が……」
「まーまー、偶にはいいんじゃない。嵐山さん喜ぶよ」

そういったのは時枝充だった。名アシストぶりをこんなしがない俺のつぶやきなんかに発揮しないでほしい。
というか、嵐山准は今関係ないでしょう。

その後、10分程作戦会議時間ということで各チームごとに分かれることになった。
俺が烏丸京介に半ば引きずられてやってきたチョキチームは、そのメンバーを確認したところさらに帰りたさが加速した。
黙る俺と、黙る俺をにらむ、菊地原士郎。

「………」
「………」
「…空気が重いって顔してるな古寺」
「え!?いや別にそんなつもりは…!」

メンバーは烏丸京介・菊地原士郎・古寺章平らしい。
正直菊地原士郎とは面識ないし、睨まれる謂れはない、と思う。学校は同じだが、同じクラスではないし。今のところ迷惑はかけていない、と思う。多分。いや、俺が生きていること自体が迷惑であれば本当に申し訳ないので一回死のう。
俺が死にたいと思っていると、菊地原士郎はいやそうな表情を浮かべた。

「ったく何でこんなくだんない遊びにつきあわないといけないのさ。しかもこんな陰鬱なやつと一緒に」
「………」
「い、いいじゃない。たまにはさ。交流ってことで」
「別に望んでない」

フォローする古寺章平を瞬殺する菊地原士郎。この二人は仲がいいんだろうか。いや、そうか、つまり二人はA級だし、烏丸京介は玉狛だし、俺がクソ弱すぎて役立たずだし、もう帰った方がいいと思う。
そもそも何でこんなことになったのか。
発案者は佐鳥賢や別役太一だと聞いている。
16歳を集めてチームを作り、模擬戦をしようなど、ものすごく実りのありそうな話だ。A級も多い16歳は勉強にもなるだろう。でもこの場に俺は激しく必要がない気がする。居ても居なくても変わらないなら、居なくてもいいじゃないか。でもそれが言い出せず、ずるずると引きずられてこの場にいてしまっている形で。そっとフェードアウトしたいが先程から烏丸京介に服の裾をつかまれていて動けない。

「作戦を考えるか。どうする」

烏丸京介の言葉に俺は口を開く。
今帰れないなら一刻もはやく退場するしかない。

「俺が誰か一人適当に捕まえて、そこをもろともぐさっと」
「良いね」
「良くないよ!」

菊地原士郎が賛同してくれたが、古寺章平に止められた。
俺は果敢にアプローチをする。
人間は適材適所だと思う。このチームで俺ができることなんて決まっている。

「じゃあ…誰か一人をおびき出すから、そこをもろともぐさっと」
「良いんじゃない」
「良くないよ!ていうかさっきと変わってないし!」

なぜだ、最も効率良く確実に一人は落とせるのに。
俺が不思議そうに首を傾げると、古寺章平は冷や汗をかいていた。

「とりまるからも何かこの二人に言ってよ!」
「……意外に仲良いな」
「げっ、こんなのと一緒にしないでよ」

仲は良くないと思う。そもそも友人でもないし。菊地原士郎のパーソナルスペースの狭さからいって、俺は友人にはなりえないと思う。
しかし俺の存在が菊地原士郎にとって疎ましくなることは考えられる。

「すみません」
「謝んないでよ、俺が悪いみたいになる」
「すみません」

そうはいっても俺にできることといえば、謝罪か…自爆かしかない。
俺が謝ればその分菊地原士郎の顔は歪んだ。ああ、申し訳ない。やはり死ぬしかない。
烏丸がそんな俺たちにを見て薄く笑った。そして告げた言葉は、俺には残酷な言葉だった。

「というか、しとど。自爆禁止だ」
「え」
「嵐山さんから念押しされている」
「………」

なんてこった。この場に居ないのに、嵐山准がしゃしゃりでてくる。




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