20歳組の乱戦


//弧月+シューター
//色々と物騒な夢主











しゃがみ込む堤のトリオン供給機関に弧月を向ける。
一突きで堤は退場となるだろう。

「堤、今すぐ選べ。俺に後で殺されるか、俺に今殺されるか」
「出会って早々物騒だな!」

結局殺すわけだが最初にベイルアウトしたいかどうかぐらいは選ばせるつもりで聞いたが、堤には俺の優しさが伝わらなかったらしい。
隙を伺う銃を足で踏みつけて地に伏せさせる。

「俺は今すごくイライラしてんだよ。二宮も太刀川も俺の手で殺したいんだ」
「本当にお前は物騒だな……」
「ありがとう。褒め言葉だ」

菩薩顔の堤に言われると神様に太鼓判を押された様で心強い。二宮と太刀川を殺るのも許された気がする。

「それで、答えは?」
「ちなみに後でになると、俺の役目は?」
「加古の相手をしろ」
「やっぱりか!無理だ!というかこの乱戦をする前から薄々わかっていたけど俺が一番劣勢だろ!」
「堤、自信を持て。万が……兆が一の可能性もあり得る」
「……それ無いって言ってるようなもんだからな」

苦虫を噛み潰したような顔に、俺はため息をつく。
いや確かに堤が加古に勝とうなんて、兆が一にもあり得るようなあり得ないような感じではあるが、やる前から諦めるような、胆の座っていない男は情けなくて仕方ない。
俺は弧月でさくっと斬る。

「じゃあ死ね」
「しとど…ホントに……!」

トリオン供給機関を破壊された堤がベイルアウトする。
俺はすぐにアステロイドを展開し、こちらに向かってくる旋空弧月を空中で追撃する。
ゆるりとそちらに身体を向ける。

「太刀川……お前、人が堤と楽しくお喋りしてるところへ茶々入れんじゃねーよ」
「楽しそうだったから参加したまでだ」
「どの面下げて言ってんだよ、お前が言っても可愛くねーんだよ。おっさん」
「おっさ…!おっさんはねーだろ!」

二十歳のメンバーは誰もがどうみても二十歳ではないが、太刀川は群を抜いておっさんだと思う。全部髭のせいかな。
俺と太刀川はその場を飛びのく。空から降ってきたアステロイドの雨を避ければ、加古が姿を現した。

「あら。どこをどう見てもおじさんね」
「ほら見ろ、加古も同意見じゃないか」
「お前らに俺の魅力伝わんねーのかなー!?」
「自分の顔を鏡でじっくり見てからもう一回言え」

アステロイドで加古を牽制して、太刀川に斬りかかる。がきんと刃がぶつかる振動。
弧月と弧月だと、刃が折れることはまずなく、純粋な力勝負だ。
近場でも見てもおっさんだったので俺は吐き捨てる。

「ちなみに鏡で見てもわかんねーなら手遅れだから死ね」
「お前ホント物騒!そういう短気良くないと思う!」

太刀川はもう一本の弧月でこちらに斬りかかる。俺はそれを身を引いて避けた。
距離をとりざまに、通りがかりの建物をアステロイドで壊す。
ずさっと足元の瓦礫を踏みしめて、俺は顔をしかめる。

「二宮ぁ、そういう高見の見物止めろよな」
「……残念だ。お前らが共倒れしてくれれば俺は労力なく勝てた」

建物内でこちらを見物していた二宮。乱戦となれば確かに共倒れを待つのはありだが、こういう身内の中の遊びで一人高みの見物を決め込むすかしたやつほどムカつくものはない。
太刀川も同じ気持ちらしくわざとらしく非難する。

「あーやだやだ、そういうのこの場で出すの」
「これだからお坊ちゃん顔は」
「それ言うと加古もセレブ顔だけどな」
「……太刀川が一番金持ってなさそうだよな」
「ひでぇ!傷ついた!俺のガラスのハートが粉々に砕け散った!」

斬られてもいない胸を押さえて喚く太刀川に俺は率直に今の感情を伝える。

「じゃあそのまま死ね」
「しとどに同じく」
「面白くないけど二人と同意見ね」
「シューター怖ぇよ!なんだよ仲良しかよ!俺もまぜろよ!!!」

太刀川が消えてくれたら大分楽に二宮を殺せるのに。
俺が隠さずあからさまに舌打ちをしたら、太刀川がショックを受けた顔をした。








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