国近のオトウト


//16歳 進学校組で菊地原とクラスメイトだけど特にそんなことは関係ない
//五万の設定がチラチラします









太刀川隊の隊室が開いて入ってきた姿を視界にいれ、出水は寝転がっていたソファから体を起こした。

「ねーちゃんいるー?」
「よう、しとど」
「あ、いずみん先輩。ちわっす」

太刀川隊のオペレーター国近に似てとろっとした目を持つ少年、しとどはその見た目通り国近の弟だった。
姉と違うところ言えば、特定の隊に所属していないオペレータであるここと、頭が良いということだろうか。
進学校組で、あの菊地原と仲がいいという点は普通にすごい。

「どうした?」
「今日うち親居ないんで晩飯ないんすよー。だからねーちゃに晩御飯何食べたいかラインしたのに全然返事返してこないから、ぜってぇゲームに夢中で見ていないなこいつと思って」
「ああ…」

国近姉弟は、生活家事全般の主導権を弟が握っている。
本人曰く、姉が全くくその役にも立たず、洗濯機も回せない、食器すら満足に洗えないのだと憤慨していた。
せめて洗濯物のブラジャーぐらい自分の手で洗えと言ってきたときはさすがに居たたまれなくなって暫く国近姉を直視できなかった。
そんな二人は、親がいないとなればしとどが国近姉の面倒を見ているらしい。
放っておけばいいのにとつくづく思うが、同じ屋根の下にいる以上まとめて面倒見ると決めているそうだ。律儀な奴。

「柚宇さんなら結構前に今さん達と購買に行ったけど」
「つまりそれは机の上にスマホおいて出かけた馬鹿野郎展開」
「お前姉に対して容赦ないよな」
「姉弟なんてこんなもんじゃないんですか?この年でねーちゃんとまともに喋れなくなる奴も多いけどうちはまだ全然だし、ねーちゃんが馬鹿なのが全部悪いけど」
「あ、そう……」

弟のくせに姉の面倒を見続けた結果なのか、非常に姉に容赦がなかった。
姉も姉で弟に甘えることになれてしまい、「ひどいー」と笑って流すので、出水の理想の姉弟の図とは大幅に違うが、この家のコミュニケーションはこういうものだと思うことにした。

「お前またこの間盛大に断れてただろ」
「見てたんですか?」

そう言えばこの間また見かけてしまった。
わりと本部にいる限りどこででも見られる光景だが。
しとどはその時を思い出しているのか悔しそうな表情を浮かべる。

「もーまじ悔しい。これで断られる事34回目ですよ!」
「数えてんのか」
「だって次回に生かさないとといけないし!」
「高望みじゃねーの…?」
「分かってますよ!でも俺はあの隊のオペレーターになりたいんです!」

しとどの言う、あの隊というのが問題なのだ。
先日容易くA級にのぼりつめ現在注目されまくり目立ちまくりのチーム。
出水はソファーの上であぐらをかく。

「競争率もすげーけど…そもそもあの隊、人員募集してないだろ。オペレーターは3人出来るし」
「募集してないですけど!でも俺が入れば全員戦闘に回れるじゃないですか!そしたらいずみん先輩も太刀川さんも蹴散らしてA級1位になれるじゃないですか!」
「お前本人に対して失礼じゃねーか。戦闘員だったらハチの巣にしてるところだわ」

本人を目の前にしてなんて容赦のない男だ。
口元をひくつかせる出水にしとどは気が付かない。

「なんでんなにあのチームに入りたいんだよ」
「格好良いじゃないっすか」
「すげー短絡的な答え」

なんだ、普通かよ。
出水がそう口にするとしとどは垂れている目をむっと引き上げた。

「俺はそこら辺の奴とは違いますから!」
「へー」
「俺は心の底から尊敬してるファンなんです!」
「え、その話聞かないとだめなやつ?」
「だからあの人たちが格好良く戦う所をサポートして一番近くで見たいんです!」
「へー」
「俺オペレーターとしてかなり出来る方だと思うんですよ!臨時でオペレーター代行する時も評判いいし!指名率高いし!ねーちゃんより頭いいし!」
「へー」

指名率ってホストかよ。
出水はだんだん聞くのが面倒くさくなって途中でスマホをいじる。
ああああ、あの人からラインが!
出水を振り回している相手からまた振り回す感じのラインがきていて、それでも出水は喜々として返信する。

「でも、先輩からは中々オッケーもらえないし…」
「へー…ちなみに誰に頼んでんだ?」
「荒船先輩と同学年の」
「嗚呼…」
「他の人は神々し過ぎるって言うか!?大体見つけられない人が2人いらっしゃるんですけどね!?」

出された名前に遠い目になる。
そりゃその人に聞いたら遊ばれるに決まっている。
完全に相手にされてないと思い哀れに思ったが、しとどは諦めていないようなので黙っておくことにした。

「今日もお願いしたんですけど…」
「今日もかよ」
「『ハンガーが1つもない県はどーこだ?』って言われて」
「は?」
「10秒内に答えられなかったからチャレンジ失敗して……」
「え、クイズ形式なのか?ちなみに答えは?」
「福岡県です」
「ふくをかけ……ダジャンレかよ!?」

遊ばれ過ぎているだろ。
35回もしとどは遊ばれているらしい。頭がいいくせに、変なところで馬鹿だ。
はやくそのことに気が付けと、声には出さず念を飛ばしておいた。

「あーもう!明日また頑張ります!」
「あ、そう…」
「ねーちゃん戻ってきたらライン返す様に言っておいてください!」
「分かった」

明日も挑むのかという言葉は呑み込んだ。
もうこいつじゃ気が付けないだろうから、やんわり他のメンバーから断りを入れてもらった方がこいつのためなんじゃないか。
そんな出水の心配をよそに、しとどは踵を返す。

「じゃあ俺スーパーの特売に行くんで!」
「主婦かよ」









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