鋼の味/ハロウィン会話





「タクミくん、はいこれあげる」
「これは……焼き菓子?」
「そ、クッキー。ニノとレベッカと、あとカムイと一緒に作ったんだ」
「カムイ姉さんと、ね。ふぅん……。」
「タクミくん、あんな美人でかわいいお姉さんなんだしもうちょっと仲良くしなよ」
「ホント、あんたは誰にでも懐くよな」
「誰にでもじゃないよ!人を犬みたいに」
「はいはい。姉さんのことだけど、僕はまだ認めた訳じゃない。ずっと暗夜にいた人間を信じるなんて……リョウマ兄さんもヒノカ姉さんもサクラも甘すぎるんだ」
「私、その辺りの事情はよく知らないけど……裏表のあるような人には見えないけどな」
「見た目だけで人を判断出来たら苦労しないさ」
「タクミくんみたいに?」
「何で僕が出てくるんだよ」
「タクミくん、パッと見ただけだと強気で、生意気だけど」
「おい」
「実際はけっこう押しに弱くて、思慮深くて、優しいでしょ?」
「あんたはどうしてそう人を褒め殺すんだ……!」
「あはは、照れてる?」
「からかうなよ!」
「知らないの?ハロウィンはお菓子をあげた人をイタズラして良いんだよ」
「ハロウィンとやらは知らないけど、それは嘘だってことは判る」




──


「で、あんたが作ったのはどれ?」
「みんなで量って混ぜて焼いたから、私だけが作ったわけじゃないけど……あ、この模様は私かな」
「姉さんのは?」
「うーん……これかな?って、それだけ避けて食べないの!」
「だって姉さんの料理は……いや、なんでもない」