ガブリ、首を噛まれる。噛まれたとこがじんじんと痛む、きっと私の首を噛んだヤツを思い切り睨む。当の本人は飄々と私を見下していた。それが気に食わなくて、ぎりっと奥歯を噛み締める。


「何だ?」

『何でも、ありません』



答えが不満だったのか、それとも反応が不服だったのか、両方だろうか、ベッドに身を沈められる。

『へい、ちょ』
「黙れ」


少し怖くなって無意味だとわかっていながらでもそれを悟られたくなくてシーツをキツく握りしめる、どの位たっただろうか、兵長のキレイな顔が徐々に近づいて唇を貪られる。翻弄されるのがいやで逃げれば巧みに絡ませられ、かと思えばなぞられて、うまく呼吸ができなくて、肩を押すけれど人類最強に適うわけもなくて、それがまた悔しくてせめてもの嫌がらせに兵長の服を握った、潔癖症の兵長には堪らないだろう、ざまあみろ


「はっ、随分と余裕そうだな」

『お陰様で』


余裕がないのを悟られないように必死になったこの返答はどうやらお気に召さなかったようで、兵長は不機嫌そうに私のシャツのボタンを外していったのだった。



20130517/きらいなひと


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